不思議なことが起こるものだ。1995年にリリースされたオリジナルビデオ作品「オールナイトロング2」(松村克弥監督)が、今になってベトナムで熱い支持を得ているからである。
ロリータコンプレックスでオタクの高校生が、不良の同級生らにいじめられ、不良グループのゲイのリーダーからの一方的な愛情表現にも苦しめられていた。ところがある日、ブチ切れて反撃し、ネットで知り合った仲間たちを含めて皆殺しにする…。
そんなストーリーが描かれ、あまりに過激なシーンが登場するため、劇場公開を自粛されたという逸話を持つ問題作だ。VHSビデオは発売されているが、DVDは出てない。それがベトナムで…とはどういうことか。映画関係者が語る。
「この作品を見た中国人が、切り抜き動画をベトナムのサイトにアップしたのがきっかけでした。その中国人が日本のVHSを入手して見たのか、あるいはアメリカではDVDが発売されているので、それを見たのかはわかりませんが。ベトナムでは映画が人気の娯楽で、なぜかホラーやバイオレンス映画が好まれる。それで『オールナイトロング2』人気に火が付いたようです」
同性愛の要素も、熱い支持を得ている原因だ。タイをはじめ東南アジアではBL(ボーイズラブ、男性同士の恋愛)作品が大人気で、数年前からベトナムでもイケメン同士のBL作がヒットしている。「オールナイトロング2」も主演俳優・遠藤雅と不良のリーダー役の高橋将仁がイケメンということもあり、ベトナムのBLファンの心をくすぐっているのだ。
現在50歳になり、札幌でテレビのレポーターをしている遠藤雅のInstagramには「かわいいね」「本当に美しい」「ベトナムでのブレイク おめでとうございます」などといったベトナム語や英語、日本語でのメッセージが殺到している。当の遠藤(写真)に話を聞いてみると、
「ひと月ほど前から私のInstagramに、どう発音したらいいかわからない名前の方たちからフォローされ、10日ほど前からメッセージリクエストが何十人もの方から送られてくるようになりました。メッセージをやりとりして、ベトナムや中国で『オールナイトロング2』と、私のデビュー作で同性愛者を演じた映画『二十歳の微熱』が熱狂的な人気なのだと知り、戸惑いました。撮影当時はまさか、30年後に海外でブレイクするとは夢にも思わなかったので。当時の私は10代。今は立派なオジサンなので、みなさんの夢を壊さないといいのですが(笑)。人生って本当に不思議で面白いですね」
相手役たる、不良のリーダーを演じる高橋将仁は現在、企画・プロデュース団体「Wave Jack Creation」代表としての仕事がメイン。高橋のInstagramにも、ベトナムのファンから熱いコメントが寄せられている。
国境や時代を超えて作品が鑑賞されるというのは、製作者やキャストには望外の喜び。SNSの可能性は、これからもっと広がるのかもしれない。