おぎやはぎ・矢作兼は4歳の頃に両親が離婚し、母親に育てられた。父親とは長い間、交流がなく、大人になってからは父親に対して、いっさいの感情がないという。
そんなところへ突如、裁判所から1通の封書が届いた。父親の姉(矢作にとっての叔母さん)が車で事故を起こしたものの、保険に入っておらず、被害者への賠償金を払ってくれないか、という内容だった。矢作が回想する。
「そんな大した金額でもなかったんだけど、最初、名前を見てもよくわかんないし。恐ろしい話ね。50年前に離婚している父親のお姉さんの、何かやっちゃった支払い義務が俺んところまで来て。俺からしてみたら、全く関係ない。もうポカンよ」
その叔母はすでに他界しており、息子がいたが、ひとりは音信不通、もうひとりは亡くなっていた。支払いするかどうかは選択できるようになっていたが、拒否するにしても簡単ではなく、戸籍謄本などの書類に加え、収入印紙6000円分が必要だった。
「『拒否することもできます。ただ、拒否するにはこれぐらい金払え』って言ってるようなもんじゃない。だって収入印紙はお金なんだから。もう送り返すだけだって面倒くさいわけよ。こっちは忙しいのに。こんなことあるんだな、ってさ」
矢作は憤りを隠さず、そう語るのだった。
東野幸治の父親も、これまたヤバイ。東野が振り返る。
「僕の父親は今から3年ほど前に亡くなったんですけど、ほぼほぼ働いたことがなくて、なんとかギリギリ、我々は育ったんですけど。結局、いろんなところに借金を作って。ある日、朝刊のチラシの不動産物件をたまたま見てたら、ウチとよう似た物件やなって。そしたら、ウチが勝手に売られてたんですね。親父の手によって。借金返せなくて。それで母親が『そんなん知らんやん』ってケンカになった末、親父は『この家で借金返して、俺は俺で勝手にやるわ』って。それで別れたんですよ」
ある日、父親は行方不明に。その後、病院から吉本興業に電話がかかってきた。
「実は2年ほど前に倒れて、寝たきりになってます。うなりながら『東野幸治の親や、支払いはアイツや』って。病院も信じなかったらしいんですけど、ほんで行ってみたら本当にそうで。ちょっと体が脳梗塞でガタが来てて。太ってた親父が見る影もなくガリガリになってて…」
もう先はそう長くないだろうと感じたため、
「俺が責任を持ってお見舞いも行くし、病院の方も挨拶していく」
東野はそう伝えたのだが、その1カ月後にしっかり亡くなったという。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。