鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造のマンションに比べて、木造の住宅は基本的に地震に弱いとされている。そのため、木造の建物については、新耐震基準の施行から19年後に定められた「2000年基準」によって、耐震強度がさらに強化された。
しかし、2000年基準で建てられた木造住宅であっても、新耐震基準で建てられたマンション同様、強い揺れによって補修不能な損傷を受けるリスクは存在する。しかも木造の中古住宅の中には、耐震改修もなされないまま、旧耐震基準で建てられたままの耐震強度で販売されている、見た目だけはオシャレなリフォーム物件も少なくない。
加えて木造住宅の場合、仮に建物が無事であったとしても、地震発生後の火災や、延焼によって焼失してしまうリスクも存在する。とりわけ都市部にある木密地域(木造住宅密集地域)では、全域が焼け野原と化してしまう危険性が極めて高いのだ。
さらに言えば、地震による家屋や家財などの損害は火災保険の対象外とされており、地震保険も火災保険に加入していなければ契約できない仕組み(付帯契約)になっている。しかも、最後の頼みの綱となる地震保険で支払われる金額は、同時に加入している火災保険に定める保険金額の30~50%にすぎないのである。
言うまでもなく、豪邸や別荘をポケットマネーで購入できる大富豪ならいざ知らず、カツカツの生活状況で住宅ローンを組んでいる大多数の庶民世帯にとって、地震で「夢のマイホーム」の資産価値がゼロに帰すことは死活問題となる。
仮に地震保険で支払われたカネを頭金にして新たなローンを組み、なんとかマイホームを建て替えることができたとしても、負債総額はそれまでの残債が上乗せされる形で、膨れ上がってしまう。また、マイホームの再建を諦め、土地を売り払ったとしても、残債の額によっては、なおも巨額の借金を抱えるという現実に直面することになる。
以上のような実情を踏まえれば、世界有数の地震国である日本においては、この際、木造であるか否かを問わず、土地の上に建つ上物については、「不動産」ではなく「動産」にすぎないと考えておく必要があるのではないか。
(森省歩)
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。