列車の運行を擬音で表現しようとすると、多くの人が「ガタンゴトン」もしくは「ガッタンゴットン」になることだろう。しかし最近は、この音を聞けなくなっている。
これはレールとレールの継ぎ目を、車輪が通過する際の音だ。レールは気温が上がると伸びるので、レールとレールを少し離して余裕を持たせていた。そのため、そこを車輪が通過すると「ガタンゴトン」と音がするのである。一般的には「ジョイント音」と呼ばれる。
それがなぜ聞けなくなったのか。理由はレールにあると、鉄道ライターが説明する。
「レールの長さは25メートルが標準でした。これを繋いで線路にしていたんです。それが最近は『ロングレール』と呼ばれる200メートル以上の長いものが使われています。しかもレールとレールに隙間を作らず、ぴったりとくっつけて敷き、継ぎ目を溶接するため、音が発生するポイントがないんです」
ロングレールは多くの路線で使われ、とりわけ新幹線では顕著だ。最長は東北新幹線のいわて沼宮内と八戸の間で、60.415キロにもなる。
200メートルを超える長いレールは、どうやって運ぶのか。ここで活躍するのが「ロングレール運搬車両」だ。JR東日本には「キヤE195系」という気動車があり、JR東海は気動車「キヤ97系」、JR北海道は専用の運搬車を持っている。あるいは、ロングレール専用貨車(写真)を用いることも。これはレールを搭載するための装置が付けられた特別な貨車で、機関車が牽引して目的地まで運ぶ。敷設する時に溶接し、より長いレールにしていくのである。
ここでひとつの疑問が浮かぶ。レールは気温が上がると伸びるため、レールとレールの隙間を作っていた。ロングレールではその隙間がなくなるが、問題はないのだろうか。
「温度が上がってレールが伸びようとすると、レールとは垂直方向の外側に力が掛かり、歪んでしまいます。そこでバラスト(枕木を固定するための砂利)の中に枕木を置いてしっかり固定することで、レールが歪まないように押さえ込んでいます。レールを固定するためには、特別な枕木を使うこともありますね」(前出・鉄道ライター)
レールは列車の運行を下から支える重要な部分。安全で快適な運行のために、今も研究と開発が続けられている。
(海野久泰)