埼玉県八潮市の幹線道路で発生した、巨大下水管損傷による道路陥没事故。トラック運転手の捜索や復旧へ向けた工事がどんどん長引く中、近隣住民は汚水が放つ「悪臭」をはじめとする、耐え難い生活被害に苦しめられてきた。
事故発生から1カ月を迎えようとしていた2月22日、八潮市民文化会館で開かれた県主催の住民説明会では、近隣住民からの切実な訴えが次々と飛び出した。
「避難所から自宅に戻ったら、家の中も車の中も臭い。(工事に伴う)騒音が酷くて、とてもではないが生活できる環境ではない」
「喉の奥に悪臭が溜まるくらい、本当に臭い。住める状態ではない」
「(工事に伴う)揺れは、思わずテレビで地震速報を確認してしまうほど酷い。駐車場にヒビが入ったり、家の壁に亀裂が入ったりしないか心配で、心が折れそうになる」
「運転手の救出が第一だから受け入れて生活しているが、地震のような揺れと自宅周辺に漂う悪臭で、ギリギリの生活を強いられている」
いかがだろうか。
説明会後半の質疑応答では、問題の悪臭について「有害な硫化水素との関連」を懸念する声が上がる。県側は「地上では硫化水素は検出されていない」と答えたが、揺れや騒音による生活被害も含めて、近隣住民にとってはまさに「地獄」だろう。
約2時間にわたる住民説明会の様子を取材した全国紙社会部記者は、
「説明会では、昼夜を問わず行き来する工事車両への不安として『子供に何かあったら大変なことになる』との声が上がりました。現場近くで商売をしている住民からは『営業補償』の見通しについての質問も投げかけられましたね」
県側は下水管の破損部分を迂回するバイパス管の敷設だけでも「3カ月はかかる」と説明している。とすれば、復旧工事の終了までには、年単位の時間がかかることも考えられる。説明会に参加した住民が「気が遠くなりそう」と嘆くのは当然なのだ。
生活被害に加え、ストレスによる健康被害が大いに懸念される。
(石森巌)