鉄道だけでなく買い物にも利用され、生活に欠かせないものとなった、Suicaをはじめとする交通系ICカードだが、これに今、逆風が吹いている。
熊本県内の熊本電気鉄道、九州産交バス、産交バス、熊本バス、熊本都市バスが、昨年11月で交通系ICカードでの運賃の支払いを取りやめている。理由は機器の更新に5社で12億円かかるためだ。費用の問題は他のバス会社、鉄道会社も同様で、あとに続く会社が出てくる可能性があろう。
そんな中、長野県のしなの鉄道が、Suicaの導入を決定した。2026年春からしなの鉄道の全線全駅で、Suicaで支払いができるようになる。これは大英断だと、鉄道ジャーナリストは絶賛するのだ。
「利用者にとって、Suicaはとても便利です。ただ、導入するには改札機の設置などの費用がかかるため、私鉄での導入はなかなか進みませんでした。地方の中小私鉄は、今も交通系ICカードを利用できません。それでも2022年に秩父鉄道がSuicaでの支払いを始めた時は、とても驚きました。そして昨年末に、しなの鉄道もSuica利用を開始。これによって中小私鉄のSuica導入が進む可能性があります」
しなの鉄道がSuica導入にかける費用は、約15億円。全額を自社で負担するのではなく、国や長野県、沿線の自治体の支援を受ける。
「他の中小私鉄も支援を受けることができれば、ICカードを導入できるわけです。しなの鉄道をきっかけに、沿線自治体が支援に乗り出し、導入が進んでほしいものです」(前出・鉄道ジャーナリスト)
全ての鉄道会社で交通系ICカードが使えるようになってほしい。
(海野久泰)