冬眠明けの季節を迎え、クマによる人的被害が相次いでいる。
長野県飯山市の住宅街では4月9日、成獣とみられる体長約1メートルのツキノワグマが、物置で作業をしていた65歳の男性を襲撃。さらにクマは付近の住宅の窓ガラスを突き破って侵入し、2階の茶の間にいた96歳の男性と66歳の女性を次々と襲った。
7日後の4月16日には飯山市に隣接する木島平村で、農作業をしていた90歳の女性がクマに襲われ、右腕や背中など、少なくとも11カ所を負傷。飯山市や木島平村の住民からは「怖くて外出できない」と不安の声が上がっている。
幸いなことに、今回の襲撃で死者は出ていない。しかし、である。ほとんど知られていないことだが、実は「病院に搬送」「命に別状なし」などと報じられる、クマによる人的被害の実相は、凄絶極まる。地元メディアの報道記者が明かす。
「今回、クマに襲われた4人のうち、飯山市の男性2人は顔面を抉られて重傷です。うち1人は眼球とその周辺に修復不能な傷を負い、眼球を摘出して傷口を縫合する手術を余儀なくされています。襲撃の爪痕は、顔貌が変わってしまうほど痛々しいものでした」
日本にはツキノワグマ(本州以南)とヒグマ(北海道)が棲息しているが、いずれも最初の一撃で人間の顔面を狙う習性があるとされている。報道記者が続ける。
「昨年、秋田県内でクマに襲われた男性は一撃で顔面を左右に引き裂かれ、救急隊員が現場で回収した鼻を縫い合わせる形成手術を受けました。同様に眼球をいきなり抉り取られるケースも多く、中には顔面の皮膚や筋肉をゴッソリと削ぎ取られ、移植手術を受けなければならないことも。さらに顔面の骨を砕かれた場合には、骨片を金属プレートで繋ぎ合わせるなど、大手術を覚悟しなければならないのです」
病院に搬送されたが、命に別状はない…。こんなひと言で片づけられてきた被害報道の裏側には、かくも悲惨な現実が秘められていたのだ。
結局、クマに襲撃された際には、うつ伏せになって頭部と顔面を両手で守ることくらいしか、有効な対処法はないということか。
(石森巌)