冬場は朝晩と日中との気温差が激しくなりますが、それが、「冬バテ」の原因の一番目となります。寒い屋外と、暖房の効いた屋内に対応しようとして、体が必要以上にエネルギーを消費し、自律神経の働きが乱れてしまうのです。気温が寒いと、交感神経が高ぶり、血管が縮みます。それとは反対に暖かい場合、副交感神経が高ぶり、血管が広がります。こうした働きをつかさどっているのが、自律神経です。しかし、気温差が激しいと、この自律神経のバランスが崩れ、体調も崩れるというわけです。冬は、四季の中で最も寒暖差があるとも言えます。
また、冬バテの原因の二番目は、寒さです。寒さが厳しさを増すと、交感神経がより活発化し、血管が収縮するので、血流が悪化します。そうなると、リラックスを促す副交感神経が働かず、常に体が緊張した状態になり、冬バテを悪化させます。夏バテよりも症状が多彩で重度なのはこの理由によります。
夏バテだと本人も注意しますが、冬バテというものがあることを知らないで、つい油断してしまうケースも多いようです。
「冬バテ」の症状としては、「やる気が出ない」「イライラする」「筋肉のコリ」や「だるさや疲労感」「頭痛」「寝つきが悪い」などがあげられます。また、手足の冷えや、胃腸不良を訴える人も多いようです。チェック項目(※記事の下部に掲載)の【6】~【10】に当てはまる人は要注意です。
では、具体的にチェック項目を詳しく見てみましょう。
【1】の「爪が割れやすい」人は、交感神経が高ぶり、血の巡りが悪くなっている可能性があります。
【2】「体がむくみやすい」のは、運動不足で代謝が落ちていることを示唆します。
【3】の「汗をかきにくい」も、代謝が低下し、血行不良になっている証拠。
【4】は、なぜこれが「冬バテ」に関係あるのかと不思議に思うかもしれませんが、血行不良になっていると、末梢神経に影響を及ぼし「耳を折ると痛い」と感じます。皆さんもぜひ試してみてください。
とはいっても、「冬バテ」を解消するためにはどうしたらいいか。私のオススメの対策は、3つあります。
1つ目が「体を温める」こと。38~40℃ぐらいのぬるめの風呂に入れば、リラックスする副交感神経が高まります。あまり熱いお湯に入ると逆効果なので気をつけて。
2つ目は、「室内でゆっくりとした運動」です。ヨガやストレッチ、ラジオ体操などがオススメです。
最後は、「規則正しいバランスのとれた食事」です。三食きちんと食べることと、「ALA(アラ)」を多く含む食品を摂取することをオススメします。「ALA」とは、体内で作られるアミノ酸の一種で、不足すると疲れがたまり、元気が出なくなります。
「ALA」を多く含む食品は、野菜・果物ではバナナ、ピーマン、ホウレンソウ、トマトなど。肉・魚介ではタコ、イカ、牛ひき肉など。その他、納豆や日本酒、赤ワインなどにも多く含まれています。これらの食品を積極的にとりましょう。
また、寝る前にリラックスするため、ハーブティーを飲むのも有効です。逆にしてはいけないのが、パソコンやスマートフォンを見ること。睡眠障害の回でも申し上げましたが、寝る前にこれらの電子機器の使用は極力避けるようにしてください。
最後にもう一つ、「朝、日の光を浴びるようにする」ことも大切です。なぜなら、冬は日照時間が少ないので、夜に眠気を催される「メラトニン」の分泌量が減るからです。「メラトニン」の分泌量が不足すれば、睡眠障害に陥りやすく、自律神経のバランスの崩れにもつながります。ですから、しっかり眠るためにも、朝は日の光をしっかり浴びて、「メラトニン」の分泌量を増やして、質のよい睡眠をとれるよう、心がけてください。
命が目覚める春を迎えれば、自然と体中にエネルギーが満ち満ちて、心もウキウキするのが人間です。なのに、なぜか心が晴れず体調も悪いという人は、「冬バテ」というものがあることを認識して、しっかりと体のケアをしてください。そして「冬バテ」を克服して、よい春を迎えましょう。
──冬バテチェック項目──
【1】よく爪が割れることがある
【2】体がむくみやすい
【3】運動をしても、汗をかきにくい
【4】耳を指で曲げると痛い
【5】手足が冷える
【6】原因不明の下痢など、胃腸の調子が悪い
【7】筋肉にコリを感じることがある
【8】よく寝たはずなのに、体のだるさや疲労感がなかなかとれない
【9】何となくやる気が出ない。ちょっとしたことですぐイライラする
【10】たびたび頭痛がする
※0~3個は経過観察、4~6個は医師に相談を。7個以上は医師の診察を受けてください
◆監修 森田豊(もりた・ゆたか) 医師・医療ジャーナリスト・医学博士。レギュラー番組「バイキング」(フジテレビ系)など多数。ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修も務めた。