「俳優として参加する時は、監督の意向で動くじゃない。タケちゃんって、言わないじゃない。もう任せきりで、新しいっちゃあ新しいし、すごいといえばすごい。落としどころを自分の中でわかっているわけだから。だから、タケちゃんの現場は楽よ」
北野武監督の映画「座頭市」(2003年)に、悪人一味のひとり「扇屋」として出演した超ベテラン俳優の石倉三郎が北野監督を評したのが、この言葉である。
「たけし軍団」のつまみ枝豆、ガダルカナルタカがMCのYouTubeチャンネル「たけし軍団TV」に出演すると、北野監督と他の監督の違いを聞かれた石倉は、冒頭のコメントの後、「ただね…」と言って、次のように続けた。
「あれ(座頭市)やった時に、俺の中ではおもしろおかしくしようと思っていないんだよ。それなりの演技をしようと思ってやったわけだよ。そうしたらタケちゃんが来て『おじさん、それ浅草だよ』って。浅草なんて、3年ぐらいしか知らないんだから。それなのにお笑いということで、自分の中で頭でっかちになってるんだろうな。そんなおかしな芝居したわけじゃねぇんだよ。ちょっとオーバーだったかもわからない。そのオーバーさが、タケちゃんにはわかったんだろうな。あの人はそういう繊細なものがものすごくあるから、大したもんだよ」
今でこそ役者として知られる石倉だが、世間に認知されたのは、レオナルド熊とお笑いコンビを組んだ「コント・レオナルド」。1985年には人気絶頂となるも、コンビ仲の悪化により解散する。そして石倉は俳優の道へと進んだ。
北野監督に話を戻せば、映画「HANABI」(1997年)でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞するなど、世界の各賞を手に入れている名監督。ビートたけし時代から知る石倉が北野監督を、
「すごいとは思ってたよ。でもあんなにすごくなるなんて思わないじゃん。滅茶苦茶だよ!」
そう称賛を惜しまないことにも、合点がいくのである。
(所ひで/ユーチューブライター)