本サイトが4月12日に公開した記事で、筆者は〈【ズバリ桜花賞】出遅れもハイペースもモノともせず…「異色路線」から殴り込みをかける「激走馬」がいた!〉と題し、3歳牝馬クラシック戦線の第1弾にあたるGⅠ・桜花賞(阪神・芝1600メートル)の「激走伏兵馬」にリンクスティップを指名した。
リンクスティップはデビュー以降、一貫してレベルの高い牡馬混合戦で上位争いを演じてきた実力馬だ。出遅れをはじめとするアクシデントを含め、どのようなレースでも若駒らしからぬ対応力を示すなど、筆者は同馬の持つ高い潜在能力に注目していた。
折しも桜花賞当日は午後から雨脚が次第に強まり、リンクスティップにとっては願ってもない馬場に。戦前の想定をかなり上回る人気にはなってしまったが、前日公開の上記記事でも断言したように、筆者は同馬の単複馬券で乾坤一擲の勝負をかけた。
ところが、である。リンクスティップはスタートで左によろけ、右によろけてきた隣の外ゲートの馬と接触。位置取りはポツンと離れた最後方となってしまった。マイル戦におけるこの出遅れは、まさに「発馬事故」とでも言うべき、致命的なアクシデントだった。
筆者はこの時点で「リンクスティップの桜花賞は終わった」と静かに覚悟を決めたが、あろうことか、痛恨の出遅れを電撃挽回した新馬戦さながらに、3コーナーから異次元の鬼脚で強烈なマクリを仕掛ける。最後の直線ではジリジリとさらなる末脚を伸ばし、キッチリと馬券圏内を死守する3着に食い込んだのである。
この「激走」がいかに稀有なものであったかは、レースの「上がりタイム」が如実に示している。事実、リンクスティップの上がり34秒0に対して、1着馬エンブロイダリーも34秒0、2着馬アルマヴェローチェは33秒9と、ほぼ同等。つまり、今回の敗因は「物理的に届かない位置取り」にあり、仮にリンクスティップが発馬を決め、スンナリと中団にポジションを確保していれば、間違いなく突き抜けていたと考えられるのだ。
そこで「今度こそ」のレースとして大いに期待されるのが、5月25日に行われる3歳牝馬クラシック第2弾のGⅠ・オークス(東京・芝2400メートル)である。
血統や体型などから考えて、リンクスティップは本来、桜花賞よりもオークスに向くタイプである。しかし、ここで忘れてならないのは、陣営が「大目標」と目論んでいるオークス制覇に立ちはだかる「壁」である。
言うまでもなく、どのような距離やコースのレースであれ、発馬を決めて位置を確保することはマストの条件となる。その上で新たな壁として浮上してくるのが、オークス当日における東京芝コースの「馬場状態」だ。
近年、オークスからダービーへと続く東京の芝コースは、主催者JRAによって「スピード」と「キレ」が要求される超高速馬場に仕上げられてきた。この傾向が今年も続くとすれば、「スタミナ」と「ナタのキレ味」を身上とするリンクスティップは、最後の直線で究極の「キレ負け」を喫する可能性が懸念されるのだ。
逆に言えば、桜花賞と同じく雨馬場となれば、リンクスティップにとってはまさに「鬼に金棒」。天はいずれの馬に味方するのか。最大のポイントは馬場状態にある。
(日高次郎/競馬アナリスト)