アメリカの超難関大学、スタンフォード大学への進学が明らかになった花巻東高3年の佐々木麟太郎を心配する声が、早くも持ち上がっている。
スタンフォード大はカリフォルニア州ベイエリアの私立大学で、シリコンバレーの中心にあることで「シリコンバレー発祥の地」とも呼ばれる名門大学。学業にかかる負担は、日本の大学の比ではない。スポーツ紙アマチュア野球担当記者が言う。
「日本で大卒といわれるプロ野球選手は多いですが、実際にきちんと卒業している人間は多くない。中には保健体育の単位以外を取得していなかったつわものもいます」
だが、アメリカの大学ではそうはいかない。現地の大学事情に詳しい教育関係者が、次のように説明する。
「日本とアメリカではそもそも、大学制度が違います。スタンフォード大はあのハーバード大より合格率が低く、偏差値に換算すれば軽く80オーバーでしょう。しかも、入学してからが大変。13分野に109の専攻があり、学生5人に対して1人の教員がつく。野球を優先して学業で手を抜くなど、許される環境ではありませんよ」
メジャーリーグでプレーした選手の中にも、ヤンキースなどで通算270勝したマイク・ムシーナのような、文武両道の選手はいる。ムシーナはこのスタンフォード大で、経済学位を3年半で取得。卒業して1990年のドラフト1巡目で指名された。
だが、花巻東高ではいくら成績優秀だったといわれる佐々木でも、英語が母国語ではないハンデはあろう。アメリカの大学に留学経験を持つマスコミ関係者が、当時を振り返る。
「とにかく課題のレポートを期日までに提出するのに四苦八苦しました。環境に慣れるだけで大変でした」
仮にメジャーリーグでプレーできなくても、スタンフォード大で学位を取得すれば、超エリートの座は確約されたようなもので、つぶしはきく。だがそうなれば、日本の球界にとっては間違いなく損失。球界関係者から、
「史上最多の高校通算140本塁打を記録した超高校級だけに、中途半端には終わってほしくない」
との声が聞こえてくるのも無理からぬ話だ。
(阿部勝彦)