「日本の高校や大学の相撲部に所属する、モンゴル人たちの進路選定が難航しています」
こう吐露して頭を抱えるのは、アマチュア相撲に詳しい角界関係者である。
日本の学生相撲出身のモンゴル人力士は、大相撲で一大勢力を築いている。鳥取城北高校出身の横綱・照ノ富士や日本体育大学出身の幕内・欧勝馬、日本大学出身の十両・水戸龍など、現役の関取衆の中でも枚挙に暇はない。そして学生相撲界にも、未来の関取候補生がひしめき合っている。
「一番のホープは、日本体育大学4年生のブフチョローン(写真)。11月の全国学生選手権を制して、学生横綱のタイトルを獲得しました。日体大のモンゴル出身としては、幕内の阿武剋以来の快挙です。幕下最下位格付け出しとして入門する資格を得たわけですが、まだ受け入れ先の部屋が決まっていないといいます。日体大にはブフチョローンと決勝の土俵で対戦したデルゲルバトや、5月の新人戦で優勝したバヤルボルドら、下級生にもプロスペクトが勢ぞろい。彼らの進路にも影響が出そうです」(前出・角界関係者)
とはいえ、相撲部屋が外国人力士を敬遠する理由は複数あるようで、
「単に親方夫妻が異文化の人間と暮らすのを毛嫌いするケースがままあります。言葉や文化の壁はありますからね。どれだけ素質があっても、共同生活で特別扱いをしてしまえば、兄弟子たちとのパワーバランスがおかしくなってしまう。そればかりか、モンゴル人の場合は関取に昇進後、親方が鈴を付けられなくなった前例が多数ある。かつて欧勝馬が稽古中にパワハラをしたことが報じられたのは最たる例。そんな風評が広がれば、日本人の若い子をリクルートできなくなるので…」(相撲部屋関係者)
そして大相撲に設けられている「外国人枠」が、門扉を閉ざすことに。相撲部屋関係者が続ける。
「『1部屋につき1人まで』というルールがあるんです。伊勢ケ浜部屋に研修生として在籍するオチルサイハンは、すでに実力は十両クラスと言われながらも枠の都合で入門できず。角界の門を叩いた2021年春から宙に浮いた存在なんです。照ノ富士が引退するまでは、入門できないと言われていますね。一方で東洋大学3先生のオトゴンバトは、玉ノ井部屋に入門が内定していると聞きました。8月の全日本大学選抜相撲で優勝した逸材ではありますが、実力以上にコネクションがなければ、モンゴル人の相撲部屋入門はなかなか叶いません」
学生相撲と大相撲の狭間で、モンゴル人力士が「大渋滞」しているのである。