全国の性サービス店に女性を紹介し、総額70億円もの報酬を得ていたとされるスカウトグループが摘発された。この事件では次々と余罪が明るみに出ているが、いまだに実態が見えにくいままの問題がある。それが「海外出稼ぎ」だ。
これまでメディアでたびたび取り上げられてきたが、最新の事情はどなっているのか。事情を知る元スカウトマンに聞いた。
「今でも性産業をめぐる海外への出稼ぎは、ホストにハマッた女性たちの間で根強い人気があります。特に日本のアダルト女優は依然として世界的なブランドとして認識されており、台湾や韓国、中東、アメリカ、オーストラリアなど、幅広い地域で需要があります」
そのため、出稼ぎ前に一度だけ作品に出演して「肩書き」を手に入れてから海外に渡る女性は少なくないという。出演歴があることで、1回あたりの報酬が上がるケースがあり、戦略的に活用されているのだ。
だが、かつて問題視された東南アジア地域への出稼ぎは、現在では敬遠されつつある。
「特にゴールデントライアングル(タイ、ラオス、ミャンマー)地域での出稼ぎは、非常にリスクが高いとされています。実際に帰国できなくなる女性もおり、拉致や人身売買といった深刻な犯罪に巻き込まれる危険性が指摘されています。それでもアメリカなどと比べて入国条件が緩やかなため、危険をかえりみずに行く女性があとを絶ちません」
現地ではいわゆる「半グレ組織」が斡旋を担うことが多く、スカウト業界では関与を避ける傾向がある。加えて「そもそも東南アジアには顧客が少ない」「半グレに搾取されて終わる」など、否定的な声が多いそうだ。
一方でシンガポールは比較的安全とされ、出稼ぎ先としての人気は高い。シンガポールではサウナ(いわゆる特殊浴場)型のサービスだけでなく、日本のデートクラブのような、形式デートとホテルを組み合わせた、時間制のサービスが主流となっている。
「デートクラブの料金は、日本円にして1時間6万5000円前後。働いている女性の中には日本でタレント活動をしていた人もいて、有名ダンスユニットの元メンバーが…という噂もありますね」(現地性産業関係者)
また、オーストラリアでは合法的な枠組みでの営業が多く、日本人経営の店舗も存在しているため、働きやすい環境が整っているとされる。ただし、最終的にどこで働くか、どのような条件で働くかは「どのスカウトマンとつながっているか」に大きく左右される。
国ごとの治安や法律の違いのみならず、女性を斡旋する人間の質こそが、安全や収入に直結しているのが現実だ。こうした出稼ぎは本人の自由な意思による選択なのか、それとも十分な情報を持たないがゆえの「誘導された選択」なのか。
下半身の需要をあてこんだ海外出稼ぎの実態を知ることは、単なる個人の問題にとどまらない。社会全体としてどう向き合うべきかを今一度、考えるべきではないか。