鉄道博物館(埼玉県さいたま市)が4月5日から5月19日まで、東武鉄道の8000系(写真は展示されている車両とは別の8000系)を展示している。8000系は東武鉄道の主力で、私鉄としては最多となる712両が製造された。展示されているのは亀戸線、大師線で運行されていた8577編成で、昭和30年代の通勤車両標準色「リバイバルカラー」に塗られた貴重な車両だ。
公開されると同時にSNSには、鉄道ファンから驚きの声が上がっている。鉄道ライターが言う。
「鉄道博物館はJR東日本が建設し、運営をしているので、展示されている車両はJR東日本と協力しているJR貨物のものが主です。そこに私鉄である東武鉄道の車両が展示されたことは、驚くべきこと。鉄道博物館の発表によれば、鉄道博物館と東武博物館は2023年から連携して企画展を行ったり、学芸員の相互出向を行うなど、交流があったとか。その関係で8000系の展示が実現したそうです」
いや、鉄道博物館が私鉄車両を展示しただけで、ここまで驚いたわけではなかった。鉄道ライターが続ける。
「JR東日本と東武鉄道は日光の観光客獲得をめぐって、熾烈な戦いを繰り広げたことがあります。関係は決していいとは言えず、むしろ悪い方でした。現在は解消されていますが、鉄道博物館に近い大宮駅の接続に関しては、今もうまくいっていません。東武鉄道はアーバンパークラインからJR大宮駅に直接入るように改札を置きたいのですが、JR東日本はスペースがないとして断っていると言われています。そんな事情を知っているだけに、より驚きの声は強くなっているのです」
車両展示をきっかけに両社が歩み寄り、大宮駅の導線がスムーズになってほしいものである。
(海野久泰)