どんなスポーツや競技でも女性が活躍すると、世間の目が一気に注がれるものだが、「そこまでするか」と懐疑的な目が向けられているのが、日本将棋連盟による「制度変更」だ。
羽生善治会長は4月22日に開いた記者会見で、女流最高位の「白玲」を通算5期獲得すれば棋士(四段)の権利を与える、という制度の変更を進めていると明かした。本来、棋士になるためには「奨励会」の最上位にあたる三段リーグで上位2名になるか、棋士編入試験に合格する必要がある。
現在、女流棋士で最もプロに近いのは、白玲を通算3期獲得している西山朋佳女流三冠。今期の白玲戦は8月30日から7番勝負が始まる予定だが、やはり優勝が有力視されている。来期も順調に勝ち上がれば、初の女性プロ棋士が誕生することになるが…。
白玲戦は今期から賞金が1500万円から4000万円に増額され、さらに副賞として1000万円の特別賞が優勝者に贈呈される。合計5000万円の賞金は、将棋界最高額となる竜王戦の優勝賞金4400万円を実質的に上回る。女流棋士のモチベーションが上がるのは間違いないが、これでいいのだろうか。
どうやら日本将棋連盟は、スポンサーの意向などもあり、なんとかして女性プロ棋士を誕生させたいようだ。そもそもプロへの門戸はこれまで男女平等に開かれており、「地獄の三段リーグ」で死闘を繰り広げている棋士のことを考えると、不公平感は否めない。将棋ファンから「愚策」の声が上がるのは当然だろう。
西山女流三冠は4月23日、第36期女流王位戦5番勝負を、体調不良のため出場辞退すると発表した。
〈突然のご報告となりましたが、医師の判断により、早急な手術および入院が必要となりました〉
自身のXではそう報告した病状は明かされていないが、白玲戦に間に合うのかどうか。
西山女流三冠は昨年、棋士編入試験に挑戦しているが、2勝3敗の成績で不合格となっている。「西山さんの実力は棋士と遜色ありません」と、満面の笑みで制度変更を発表した羽生会長だったが、どこか西山女流三冠の「救済措置」のように感じたのである。
(ケン高田)