「岡田彰布前監督や野村克也元監督のように、見出しが立つ話がほしい」
こう言って切実な気持ちを訴えるのは、在阪スポーツ紙プロ野球担当デスクだ。なにしろ「藤川球児監督の試合後のコメントがマジメすぎる」との嘆きが聞かれるのである。
振り返れば阪神監督時代のノムさんの言葉が勢いを増したポイントは、ゴールデンウィークにあった。当時はゴールデンウィーク明けには既に自力優勝が消滅。ファンからは「俺たちのゴールデンウィークは、シーズン終了のお知らせ」「阪神のゴールデンウィークはお通夜」とのブラックジョークが飛び交った。阪神寄りとされる関西のスポーツマスコミでさえも、
「5月で終戦を迎え、ストーブリーグモードに突入。7月にはドラフト会議関連の記事を頻繁に掲載した」(前出・在阪スポーツ紙デスク)
球史に残る名将である野村氏だが、1998年は開幕直後から大敗を重ね、ゴールデンウィーク近辺には勝率2割台。5月6日の巨人戦に敗戦して自力優勝が消滅し、シーズン最終成績は52勝93敗2分、勝率3割5分9厘で最下位に沈んだ。
翌年も5月17日のヤクルト戦後に自力優勝が消滅。この時点で首位とは10ゲーム差以上も開き、終わってみれば51勝86敗3分で最下位だった。
そんな状況が数々のボヤキ語録を生む。
「このチームは2軍でも1軍でも一緒。負け犬集団や」
「野球は頭でするもの。アホには無理や」
「勝ったら奇跡、負けたら平常運転」
「期待して負けると腹が立つから、もう最初から期待せん」
そればかりか、報道陣から「何かいいニュースはないですか」と質問されると、
「桜が咲いたぐらいかな」
野球には触れない、こんな迷言も生まれたのである。ちなみにノムさんはのちに「阪神の監督だけはしない方がよかった」と振り返っている。
藤川監督はそんな暗黒時代の1998年のドラフト会議で1位指名され、阪神に入団。守護神として確固たる実績を残し、今はチームの指揮を執るまでになった。藤川監督は名言、迷言は残さずとも「阪神の監督だけはしない方がよかった」とならぬよう、願うばかりで…。
(阿部勝彦)