アスリートにタバコは百害あって一利なし。至福の一服が調子を整えてくれると信じている愛煙家たちに対し、世の中の正論は「禁煙」一点張りだ。プロ球界でも「全面禁止」を打ち出す球団も出て、ヘビースモーカーの肩身はますます狭くなるばかりで‥‥。
「禁煙ルールのせいでネタ集めが難しくなったわ。喫煙所はなんせ選手、裏方スタッフから背広組に至るまで接触できる〝社交場〟やったからな」
こう嘆き節が止まらないのは、阪神担当の在阪メディア関係者である。11月1日に高知県安芸市で始動した阪神の秋季キャンプで、来季からチームを指揮する藤川球児新監督(44)肝いりの「全面禁煙」方針が発表されたのだ。先の在阪メディア関係者が続ける。
「今季までは、岡田彰布前監督(66)をはじめ選手、番記者らが代わる代わる煙をくゆらせながら雑談することもしばしば。喫煙所の狭い空間だからこそできる〝密談〟もあるわけや。それが、チーム帯同中や活動エリアでの喫煙が厳禁になって、今回の秋季キャンプも練習施設の灰皿が撤去されてしまった。来季からは甲子園のクラブハウスにある喫煙スペースも撤去される予定で、ビジターでもチーム帯同中に吸うのはNG。選手ともどもスタッフも自由に吸えなくなった」
もっとも、藤川新監督も元愛煙家の1人。みずからを棚に上げて組織改革を断行した背景には、今季リーグ優勝を逃した〝戦犯〟への警告が見え隠れしていた。球界関係者が明かす。
「一番は今季4勝5敗に低迷した伊藤将司(28)。いわゆる〝チェーンスモーカー〟で、岡田監督とは頻繁に喫煙所で顔を合わせるタバコ仲間でした。大卒4年目にして早くも能力が下降曲線を描いていただけに、さすがに藤川監督も見過ごすわけにはいなかったようだ。同様に主砲の佐藤輝明(25)もヘビースモーカーで有名。今季ダントツの23失策という守備力を改善する一手として、取り組ませているのでしょう」
屁は笑い草、煙草は忘れ草─。しかし、間違っても心配ごとはタバコで解消できることはない。医学博士の中原英臣氏も警鐘を鳴らす。
「プロアスリートがタバコを吸うのはいただけない。タバコに含まれる一酸化炭素が血中のヘモグロビンと優先的に結合してしまい、呼吸で取り入れた酸素が結合されずに全身に運ばれなくなります。そのため、持久力の低下や思考力の低下を引き起こしかねないのです。瞬発力や筋力が低下するデータまである。あのドジャースの大谷翔平(30)も絶対に吸いませんよね?」
事実として、メジャーリーガーに喫煙者は皆無に等しい。しかしながら、一律にMLB流を導入したことで別の「副作用」も浮上してきているという。
「投手出身監督の自分勝手な暴走と見る声も絶えません。キャンプ初日にわざわざ安芸にスコアラーたちを呼びつけて会議を開いていましたが、『大阪でやっておけば』と当人たちに陰口を叩かれる始末。タバコにしても、かつて自分が禁煙に成功したから強硬策を取るんでしょうが、今までは吸えたのが当たり前の環境で野手を中心に喫煙者も多数いる。それだけに、調子を崩してしまう選手が出てこないか心配です。当然、FA戦線にも影響が出るでしょう。あげくの果てには『タバコを吸う奴は使わない』などと言い出しかねない‥‥」(球界関係者)
とはいえ、岡田前監督もすでに踏み切ったように、禁煙するのが球界のトレンドとなっているのだ。