今や年中ニュースになる「クマ出没」。日本にはヒグマ(北海道)とツキノワグマ(本州以南)が棲息しているが、冬眠明けのクマはメスもオスも狂暴化することが知られている。
冬眠中に巣穴で子供を産んだメスは、冬眠明けに子グマとともに動き出す。子グマを連れた母グマは外敵に対して非常に敏感で、人間がうっかり子グマに近づこうものなら、ほぼ間違いなく猛烈な攻撃を仕掛けてくる。
一方、冬眠明けのオスは発情期を迎えて殺気立っており、人間に出くわすと理由もなく襲撃してくるケースが少なくない。しかも今年は暖気の張り出しによって冬眠明けが早まり、クマの活動活性が一段と高まっている、との指摘がある。
つまり今年のゴールデンウィークは、全国各地でクマによる人身被害が頻発しかねない、危険極まる状況下で迎える大型連休なのだ。クマの生態に詳しい専門家は、次のように警鐘を鳴らしている。
「近年は山間部やその周辺のみならず、人里や街中でもクマの出没が相次いでいます。今やクマの襲撃から免れうる『聖域』はどこにも存在せず、全ての行楽地が危険な状態にあると考えなければなりません。クマの頻出地域では、朝夕に山野をひとりで歩き回るのはむろんのこと、街中といえども夜間の外出は控えるべきでしょう」
その上でこの専門家は、クマ被害に遭わないための最低限の防御策として、旅行先の自治体が公表している「出没情報」の事前チェックを挙げている。
例えば、最近になって出没情報が多く報告され、自治体から注意喚起が発せられている場合には、「熊鈴やホイッスルなどを必ず携行する」「クマ撃退スプレーの使用方法を確認しておく」などの対策が必須となる。場合によっては出没が少ない行楽地に旅行先を変更する、という決断も必要になってくるだろう。
本サイトが4月19日に公開した記事でも指摘したように、「病院に搬送されたが、命に別状はない」などと報じられる人身被害の裏側には「眼球を抉られた」「鼻を削ぎ落とされた」など、想像を絶する凄惨な現実が横たわっている。楽しい連休を暗転させないためにも、クマへの警戒を怠ってはならない。
(石森巌)