誰でも中年にさしかかると、筋力の衰えで基礎代謝が低下したりして太りやすくなる。オヤジ世代に肥満が多いのはしかたのないことかもしれないが、肥満はさまざまな病気の引き金になるので、十分な注意が必要だ。そんな世代がかかりやすい生活習慣病として、糖尿病があげられるだろう。
厚生労働省「国民栄養・健康調査」によると、男性で「糖尿病が強く疑われる者」の割合は2013年時点で16.2%に上り、特に50歳以上にその割合が高まることが判明した。
そこで、今回は「糖尿病にかかっている」「糖尿病かもしれない」という不健康オヤジにお勧めの副業を紹介しよう。
こう言うと、「病気で苦しんでいる人間に金儲けを勧めるな! それどころではないんだ」と怒りだし、血糖値が上がるかもしれない。しかし、症状が改善できておまけにお金ももらえる、まさに一石二鳥のビジネスなので、最後まで落ち着いて耳を傾けてほしい。
それは「治験ボランティア」。簡単に言えば、製薬会社などが開発した新薬の効果を試すアルバイトだ。
製薬会社が新薬を開発する場合、厚生労働省の認可を得るために、開発の最終段階で人間を使った治験の実施が必要となる。製薬会社はこの治験を医療機関に委託して行っている。治験には3段階あって、第1段階では健康な人を対象として薬品の安全性・有効性をチェック。第2段階では少数の患者を対象に、第3段階では多数の患者を対象に有効性を確認していくのだ。
治験“ボランティア”に選ばれると、ボランティアであるにもかかわらず医療機関から1日当たり1万~数万円程度の「患者負担軽減費」という名の謝礼金が支給される。
糖尿病の治験の場合、医療機関からもらえる“患者負担軽減費”は平均すると1通院当たり1万円程度となる。治験で使う新薬代も、検査費用も、全て製薬メーカーが負担するので無料だ。唯一、診察料は自己負担になるが、1通院当たり数百円程度にすぎないので、初期投資はほとんどないと考えていいだろう。
何より糖尿病が進行して網膜症などの合併症を引き起こす前に、無料で最先端の治療をしてもらえるのだから、生涯で考えた医療費の負担軽減効果は半端でない。
もし、あなたが糖尿病の治験ボランティアをやってみようと思うなら、インターネットのサイトで「糖尿病改善モニター」を募集しているので、必要事項を記入のうえ、さっそく応募してみよう。治験の条件に適合するかどうかを医療機関で診断してもらい、適合した場合は3カ月~1年の期間、治験ボランティアとして通院する。通院の頻度は月平均1~2回程度。
最後に、この副業をする場合の注意点をあげておこう。実は治験ボランティアの募集サイトには詐欺的なものが多く含まれている。
治験ボランティアに関する情報は無料で提供することが原則で、紹介業者は希望者からは一切お金を取らず、治験を実施する医療機関から報酬をもらうことになっている。
ところが、紛らわしいことに医療機関と提携しなかったり、許可を得ずに治験ボランティアを希望する人から一定の会費や登録料・情報料を取って、勝手に不正確な情報を流す業者が結構な数で存在する。
ストレスは糖尿病の大敵。こうした詐欺的なサイトには引っ掛からないようくれぐれも注意してほしい。
◆プロフィール 門倉貴史(かどくら・たかし) 71年生まれ。95年慶應大学経済学部卒業後、銀行系シンクタンク入社以来、エコノミスト畑を歩む。現在、BRICs経済研究所代表。専門は先進・新興国経済、地下経済、労働経済学、行動経済学と多岐にわたる。