「王様と私」でブロードウェイミュージカルに初出演、演劇界最高の栄誉とされる「第69回トニー賞」でミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされた渡辺謙が、惜しくも受賞を逃した。ところが、この主演男優賞ノミネート自体に「ちょっとやりすぎ」という声があると、ハリウッド俳優らに数多くインタビューしている女性記者が顔をしかめる。
「タイ人の王様役ですから東洋人がキャスティングされることはわかりますし、アメリカで唯一、観客が名前と顔を一致させられる日本人男優ですから、謙さんの抜擢もうなずけます。ところが開幕直後のレビューでも各紙で辛口批評されたように、謙さんの英語は本当にイマイチでした。友人の現地女性はセリフの半分ぐらいはうまく聴き取れなかったらしいです。それにもまして問題だと思ったのは、歌唱力がブロードウェイで披露するレベルではなかったことですね。ノミネートと聞いたときには『えっ?ブロードウェイまで?』と衝撃を受けました」
渡辺には04年、「ラスト・サムライ」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた経歴があるが、あのノミネートには記者はおおいに納得したのだとか。なぜなら「ラスト──」の全米興収が目標の半分程度だったことで、なんとしても日本で稼がねばという明確な理由があったからだとか。結果、ノミネートも後押しとなり、日本だけで全米興収を上回る約140億円を稼ぎ、赤字映画を黒字に転換させたのだ。
「だけど、ブロードウェイまでがそれをする理由がわかりません。ひょっとして、日本で大々的に興行を打つつもりでしょうか。たしかに謙さんは55歳で初挑戦、すごい重圧の中でとても頑張っていたと思います。演出家も『存在感がすばらしい』と称賛していましたし、スターの風格は十二分にありました。ですけど、歌もセリフも及第点以下の出来でノミネートというのはやはり持ち上げすぎというか、謙さん本人も苦笑いではないでしょうか‥‥。現地の演劇専門メディアからは、日本向けの宣伝にしか思えないとチクッと言われているのは事実です」(前出・女性記者)
とくに近年、ハリウッド役者が知名度だけで本場ブロードウェイに進出することに対する批判が急増中なのだとか。日本が誇る名優がそんな火の粉をかぶることだけは、ぜひ回避したいものだが──。
(平井ゴロー)