特撮ドラマ史上初の「男女合体で変身」に挑んだ。斬新なテーマだった「ウルトラマンA」(72~73年、TBS系)で、星光子(67)は異色のヒロインとなった。
── 71年に始まった“第2次怪獣ブーム”の中核にあったのが「A(エース)」ですね。怪獣ではなく「超獣」という呼び名になったり、シリーズを通して「異次元人ヤプール」という共通の敵がいたり、新たな試みが多かった。
星 そして私が演じた南夕子と、高峰圭二さんが演じた北斗星司が空中で合体してAに変身するのも初めてのケースでした。
── 当時23歳ですが、ヒロインに選ばれたのは?
星 実は最初に別の方が夕子役に決まっていたんです。ところが、第2話を撮ったあたりでその方が舞台でケガをされて、それで急きょ私が代役に決まりました。
── 特撮モノは観ていました?
星 それが全然。ウルトラマンという名前ぐらいは知っていましたが、どういう姿形なのかもわかりませんでした。
── とまどいが見えてきそうです。
星 はい、現場はスタッフがバタバタと走り回っているのに、1人だけボーッと立っていたのが私だったかも(笑)。
── 変身シーンも含めてアクションは多かったと思いますが。
星 トランポリンの稽古もずいぶんとやりましたね。私、ずっとジャズダンスをやっていたので、飛んだり跳ねたりは楽しみながらやっていましたよ。
── シリーズでも唯一の「男女の合体」が話題になりましたが、それがラブロマンスに発展するようなことは‥‥。
星 劇中では北斗に「私のこと、どう思っているの?」と、すねるようなセリフがありましたが、それ以上のことはありません(笑)。私、歴代のウルトラヒロインでも1番、色っぽさがなかったと自負しています。
── これまで紅一点だったウルトラヒロインですが、この「A」には美川のり子隊員役の西恵子もいました。
星 西さんと私は同い年だったのに、向こうが圧倒的に色っぽいお姉さんという感じでしたね。
── ところが、放送途中の28話を持って、夕子は月星人の末裔ということで地球を離れる形で降板。これについては憶測も流れましたが、やはり「主役2人体制の難しさ」という演出上の理由だったように思われます。
星 その時はショックでしたけど、小さな子供たちが「怪獣ごっこがしづらい」などの声も聞いていたので、しかたがなかったかもしれませんね。
── その後、08年には映画の「大決戦! 超ウルトラ8兄弟」(松竹)に、北斗と結婚していたという設定でゲスト出演。
星 しかも、私の娘の紫子が夫婦の娘役で一緒に出ているんです。あれから30年以上たっているのに、皆さんのおかげで「月の世界」から地上に戻していただいたと感謝しています。
── 9月には「A」がブルーレイボックスとして発売を控えています。
星 それもファンの方々のおかげですよね。私の孫は1歳3カ月の男の子なんですが、いつか一緒に「A」の映像を楽しみたいですね。