実はこれまで両者は非公式戦ながら2度対局して結果は1勝1敗。初顔合わせとなったネット番組の企画では、先手を取った藤井五段が序盤から攻め続け、羽生竜王が持ち時間を使い切ったところで戦局はさらに有利に傾く。結果、111手で羽生竜王を投了に追い込んだ。
「個人的には、秘策がなくても藤井五段が勝つかもしれないぞと思っています。それが早指し戦です」(椎名氏)
この戦いに藤井五段が勝ち、同日に行われる決勝を制すれば、「ひふみん」こと加藤一二三氏(78)が1955年に樹立した、最年少一般棋戦優勝記録(15歳10カ月)を塗り替え、同時に六段への昇段が決まる。藤井五段にとって羽生戦は、史上初の「中学生六段」へと続く大一番となるのだ。
「どちらが勝っても、今後の将棋界を占ううえでたいへん意義深い歴史的な対局になるのは間違いありません」(松本氏)
世代交代をかけた2人の戦いはこれからも続く。
「今後、持ち時間が5時間、6時間の対局を重ね、星の偏りがどうなっていくかが楽しみです。将棋というのは、100局指して強さを計る世界です。例えば、羽生竜王が55勝45敗で勝ち越すのか。それとも逆になるのか。その記念すべき最初の一局ということです」(前出・椎名氏)
さて、藤井五段の名勝負で注目を集めるのが「将棋メシ」だ。昨年6月、歴代新記録となる公式戦29連勝を飾った際に「豚キムチうどん」を出前した将棋会館近くのそば店「みろく庵」の担当者はこう話す。
「昨年暮れの対局時は玉子雑炊(600円)を召し上がったと聞いています。藤井さんはいつも1000円以下のメニューと決めているそうです。というのも、対局するのは自分より年上の方ばかり。目上の人よりも高価なものは注文しないという気遣いでしょう。今回の対局は有楽町なので、出前をお届けすることはできませんが、ご健闘をお祈りしています」
運命の対局は2月17日10時30分開始──。食うか食われるかの真剣勝負を期待したい。