昨年にはノーベル文学賞を受賞し、世界的な人気を誇るアーティストのボブ・ディランを巡ってひと騒動だ。京都大学の山極壽一総長が4月7日に行われた入学式の式辞でディランの歌詞を引用。この式辞を大学の公式サイトに掲載したところ、日本音楽著作権協会(JASRAC)から歌詞使用料が発生する可能性について京大に連絡が入ったのだ。
この一件について著作権に詳しいライターが解説する。
「ネット上では『教育目的だから使用料は発生しない』との声もありますが、厳密に言うと微妙なところです。ウェブサイトへの掲載は著作権における“公衆送信権”に該当し、教育目的として認められるのは構内放送や学生に対して直接送信する場合のみ。今回のように誰でも見られる公式サイトへの掲載は、使用料免除に該当しない可能性があるのです」
ただそういった法的な観点はともかく、もしJASRACが使用料徴収を強行したら、当のボブ・ディランが激怒するかもしれないという。前出・ライターが続ける。
「アメリカには『フェアユース』という概念があり、日本よりも広範に著作物の利用が認められています。特に今回のような教育機関での利用であれば、著作権うんぬんを主張する人などいないと言っていいでしょう。もちろん日本とアメリカでは著作権法の運用が異なりますが、ディランが今回の件を知ったら、歌詞を引用されるのはむしろ光栄であり、使用料を徴収するなどもってのほかだと激怒するんじゃないでしょうか」
今回の件についてはJASRACに対しての風当たりも強い。今ごろは世間からの批判が「風に吹かれて」ほしいとばかりに、事態の沈静化を待っているのかもしれない。
(金田麻有)