朝起きると、寒さで指先がジンジンする、足の指が痛い、などの症状を感じることがあるかもしれません。他にも寝違え、凝りなどは一種の血行障害です。「感覚が鈍くなった」場合はそんなに怖くないですが「手足がしびれて動かない」という場合は要注意です。
しびれは脳から手足に行き渡る神経のどこかに異変があることが多く、鉛筆を落としたり、スリッパが脱げるような場合は病気の可能性があります。「違和感、ピリピリ感を覚える」「触れられているのがわからない」「力が入らない」などと進行したら要注意です。
では、ここで質問です。手のしびれと足のしびれでは、どちらがより危険性が高いでしょう。
しびれの原因は、まずは頸椎(頭を支える首の神経)を調べます。人間の頸椎は7つの骨で構成されています。上から順にC1、C2、C3となり、いちばん下がC7です。そのC7の下から出る神経はC8と呼ばれます。手の親指や人さし指がしびれる場合、C6の頸椎を調べます。C6とC7は最もヘルニアが起きやすい個所で、頸椎のヘルニアがひどくなると両手や足にしびれが生じます。
首が凝る、首が痛くて回らない、腕もしびれる、といった症状は「頸椎症」が疑われます。例えば、腕がしびれると「頸椎椎間板ヘルニア」(首の椎間板が潰れて神経を圧迫して上肢がしびれたり痛んだりする)、「頸椎症性神経根症」(首の骨が変形して神経を圧迫することで首や腕がしびれる)、腕や足がしびれると「頭椎症性脊髄症」(脊髄が圧迫され両腕や両足のしびれやマヒ、歩行障害などが表れる)などが疑われます。
頸椎の手術は非常に難しく、少しでも頸椎に触れるとマヒが残ってしまいます。というのも、頸椎の穴にはいくつもの神経が張り巡らされており、少しでも触れると、神経にマヒが生じるばかりか、最悪の場合には、首から下がマヒして寝たきりになります。
一方、主に足のしびれの原因となるのが腰椎です。腰椎は、何本かの神経が馬の尻尾(馬尾神経)のように通っているだけであり、仮に手術に失敗して腰椎の障害から車椅子生活となってしまっても、手は動きます。頸椎と腰椎、どちらの障害が怖いかといえば、首から下がマヒする頸椎です。
全身がしびれる病気はいくつもあります。例えば、糖尿病によるしびれは手足に「ぴりぴり」「じんじん」といった痛みが左右対称に出ます。夜中に両足がしびれ、裸足で歩いた際に床との間に紙があるように感じたら、糖尿病の疑いがあります。左手のみがしびれる場合は心臓病の可能性があます。
最も怖いしびれが脳卒中によるもので、動脈硬化で脳への血液が欠乏すると一時的に手足のマヒやしびれ、言語障害が起こります。
手足のしびれが長引いた場合、まずは脳の原因を疑ってください。半身だけしびれる場合は脳腫瘍や脊髄の腫瘍も疑われます。次に怖いのが椎間板ヘルニアや変形性頸椎症、腰椎の異状となります。
もっとも、しびれにはさまざまな症状や病気の可能性があり、原因や病気を特定するのは非常に難しいのが実際のところです。長引いた場合は何らかの病気が考えられますので、早めの受診を心がけてください。
しびれは皮膚のセンサーが感じ取り、長年使っていると必ず低下します。だからこそ神経を鍛えることも重要です。例えば、麻雀の盲牌は格好の神経トレーニングです。毎日のように盲牌をしていると神経は鍛えられます。指先を使うのがボケ防止につながるのも神経と脳を活性化させることができるからです。同時に、しびれが始まった際に早く気づくことができます。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。