日々熱戦を繰り広げている平昌冬季五輪の一方で、その次、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連して、東京都が作ったPR動画が物議を醸している。「東京2020 オリンピック・パラリンピック、あなたは誰と観ますか?」と銘打った動画の内容は都のリリースによれば、こうだ。
〈1964年の東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、(この動画の主人公の)祖父母は結婚して父が生まれた。それから54年経った現在、年頃の青年に育った主人公の周囲は次々と結婚していく。自分も2度目の東京をきっかけに結婚を!と、恋人へのプロポーズを決心する??〉
このPR動画は「結婚に向けた気運醸成のための動画」と位置づけられているのだが、2月1日に公開されると、ネット上には様々な疑問・批判の声が上がり始めた。
「結婚を押しつけられているようで、不快だ、よけいなお世話」「オリンピックは誰かと観なきゃいけないのか? ひとりで観たって楽しいだろ!」「東京都民の未婚率が高いのはわかるが、何でオリンピック・パラリンピックにかこつけるのかわからない」と厳しい。
とある広告代理店の女性社員はこう語る。
「これを見たからって、結婚したいなと思えないでしょ。税金を使ってこんな動画を作る前に、安心して結婚できるような経済政策・子育て政策を考えるべき」
動画制作には約3000万円の税金が投入されているという。確かにそれだけの予算があるなら、他に使い道があるように思える。また「動画での訴求ポイントがわかりづらい」と指摘するのは、ある結婚・子育て誌のライター。
「この動画の主人公であるカップルの周囲は、お金もないのに入籍していたり、1人が気楽と言っていた友人も結婚して何だか楽しそうと、情緒的に訴えるだけで、何ひとつ説得力がない。経済的な問題や子育て環境に不安を持って結婚に二の足を踏んでいる層にとっては、何の解決策も提示されていないですね」
そもそも結婚・出産だけが人生という時代ではない。夫婦や家族でも、独身でも、誰もが皆、普通に生きていける…それが多様性。すなわち、この動画の最後で声の出演をして、「あなたは誰と観ますか?」と問いかけている小池百合子都知事がよく口にしている「ダイバーシティ」そのものなのではないのだろうか?
(石見剣)