とはいえ、高齢者に薬を出し続ければ、必然的に死亡する人数も多くなると思うのだが‥‥。
「高齢化社会とはいえ、実際、日本人の人口は減っています。特に薬をたくさん使っている高齢者は今後、急激に減っていくはず。ところが、反して医者の数が増えている。新たに医者になる数と、引退していく数を差し引きすると、毎年4000人ずつ増えている。つまり医者一人あたりのパイはだんだん小さくなるはずなのに、医者たちとしては、それに抵抗し、国民一人あたりの医療費を増やそうと考えている。新しい病気を見つけたり、作り出そうという方向に拍車がかかるはずです」
となると、そんな中での、国をあげた減薬のススメには、どんな意味があるのだろうか。
「あまりにもたくさんの薬を出したことで、副作用で体の不調を訴える高齢者が急増してしまった。そこで、多少は手綱を締めなければ、という動きが出てきた。ただ、先にも触れたように経済的な枠が広がらないかぎり、構造を変えることはできないので、不可解な医療行為は今後も増えていくはずです」
今回の検討会では「患者の服薬状況の一元管理を行う薬剤師が職能を発揮し、かかりつけ医と共同で、医薬品の適正使用を推進してもらいたい」としているが、
「医療費の構造というのは国民健康保険で大半が賄われていて、それを製薬会社と医者とがぶんどり合戦をしている状態。全体のパイはほぼ変わらないので、医者の収入を増やすためには薬代を減らすしかない。だから、ジェネリックが横行している。つまり薬が減っても、処方箋料をもらえる医者にとってはなんら問題ないということです」
厚労省は「多剤服用解消のカギは多職種連携と患者の理解」としているが、インチキをして国民をだましているにもかかわらず「国民の理解」とは開いた口が塞がらない。
「日本人は『これをすれば健康になる』という情報は大好きですが、負の情報は聞きたがらない。そうではなくて、まずは正確な情報を知ること。それが自分自身の命を守る最良の方法であることを忘れてはならないのです」