高齢化による多剤服用が問題視される中、「不必要な薬を減らし、転倒やふらつきなどの副作用を防止する狙いがある」として、高齢者医薬品適正使用検討会が3月9日、「高齢者の医薬品適正使用の指針」案を大筋で了承。早々に指針を固め、都道府県宛に通知するという。だが、「日本医療の現状はそう簡単には変わらない」と指摘するのが、医師の近藤誠氏だ。
「客観的に見て、今の日本の医療の相当部分は、ムダな医療行為をやって金を儲け、医療産業を繁栄させようというレールの上に載って動いている。ただ、そんな中でも一部の人たちが、それにしてもちょっと薬を出しすぎなんじゃないか、と反省し始めている。今回の指針がその表れでしょう。ただし、医療をはじめ、日本の体制が経済中心で回っている以上、薬の過剰処方という問題は、そう簡単には変わらないし、変えようがないというのが現実だと思います」
自著「あなたが知っている健康常識では早死にする!」(徳間書店)で「服用する薬の数が多ければ多いほど死にやすい」と、実証データを用いて断言している近藤氏は、そう説明してため息をつく。
では、近藤氏が言うムダな医療行為をやって金を儲け続ける、今の日本の現状とはどんなものなのだろうか。
「世の中には『健康な人』と『病気の人』がいます。ただ、ここで言う『健康』というのは血液検査とか健康診断などを受ける前の人。つまり、検査を受ける前までは、元気で御飯もおいしいと思っていた人たちで、実はそういう人たちが圧倒的に多い。反面、本当に『病気』の人はもともと少ないし、高齢者だといずれは亡くなっていくので、さらに少なくなる。そうなると、医療産業を継続し繁栄させるためには、健康な人たちを病人だということにしなければならない。そんな事情や思惑が、医療業界の根底にはあるんです」
そして、健康な人を「病人」と認定し薬漬けにするためのシステムが、健康診断だという。
「ふだん健康だと思っている人も職場や市区町村の健康診断を受けると、なにかしら数値で引っ掛かることが多い。これは、専門家といわれる人間たちがいろいろな検査の基準値なるものを作ったり、あるいはガンとはこういうものだという診断基準を作って、人々を病気だ、ガンだとしてきたからです。でも、実は健康診断で見つかった異常を治療して人々がより健康になり、寿命が長くなるというデータはどこにもない。逆に異常を見つけ出して手術したり、薬を使うことで早死にする人が出たり、平均的に寿命が縮まるというデータはいくらでもある。ところが、そういうデータは無視され、どんどん病気が発掘されているわけです」
「病人」への入り口である健康診断で目安となるのが基準値だが、その変動にも、こんなカラクリがあるという。
「例えばWHO(世界保健機関)は、当初は各国政府が提供した資金で運営されてきましたが、途中から製薬業界からの寄付金に依存するようになった。となると、製薬会社が喜ぶことをしなければならない。そこで血圧の基準値を下げたり、糖尿病の基準値を下げたり、ということが起こった、というわけです」
以来、健康な人間を病人に仕立てる意図的な数値改竄が継続的に行われてきたというが、
「その中心的な役割を担っているのが医者と製薬会社。で、それらを後押ししているのが、厚生労働省。そして付随的な役割をしているのがテレビや新聞などのマスコミ。それが医療産業の構造なんです」