6月下旬から7月上旬に東京都心で9日連続の真夏日を記録するなど、今年は「スーパー猛暑」が到来すると言われています。熱中症や夏バテはもちろんのこと、猛暑の時期に注意したいのが日焼けです。
ここ数年、紫外線による健康被害が叫ばれていますが、同じ日焼けでも、肌が赤くなる人と黒くなる人では、どちらがより健康被害が深刻でしょうか。
夏に日光の熱を浴びて皮膚が赤くなるのは皮膚が炎症を起こしているからです。いわば軽いヤケドの症状で、紫外線を浴びてから5、6時間以上たつと痛みを感じるようになります。これが“サンバーン”と言われる炎症状態が数日間ほど続きます。
これに対し、炎天下の運動などで軽い日焼けを重ねて肌が黒くなる状態がメラニン色素の沈着で、こちらは“サンタン”と呼ばれています。いわば紫外線を通しにくくして皮膚を守る体の防御反応で、慢性の日焼けと言えるでしょう。
私たち日本人は、紫外線が強くなる夏に肌が焼け、日焼けを重ねるほど黒くなります。秋から冬にかけて紫外線が少なくなると黒い肌も少しずつ白く戻っていきます。
一方で、年中紫外線が強い国に住むアフリカ人などは、メラニン色素が沈着するため肌の色も黒くなります。逆に夏の平均気温が20度に満たない北欧のスウェーデンなどは、紫外線をほとんど浴びないため、肌も年間通して白いままです。
そんなスウェーデン人が紫外線に当たると肌が真っ赤になるのは、メラニン色素が少ないためです。つまり、皮膚が白いほどメラニン色素が少なく、日光に対して弱い状態=日光皮膚炎になりやすいと言えます。
メラニン色素が少ない場合、強い紫外線を浴びると日焼けとなって、肌が赤くなります。さらに、免疫力が低下したり皮膚へのダメージが強くなります。
特に海辺は、海水や砂浜からの照り返しで紫外線を多く浴びるのと、肌が濡れているため紫外線を通しやすい状態なので日焼けしやすい条件が整っています。皮膚が腫れたり水ぶくれが生じるほか、目の充血や頭痛、吐き気を催すこともあるので注意が必要です。
日光は人体にとって必要不可欠ですが、太陽光線にはアレルギー反応を伴う紫外線が含まれています。
その紫外線は波長の長さによりUV-A、UV-B、UV-Cに分かれます。このうちUV-Aは波長が最も長く、紫外線が肌の角質層と表皮を越えて真皮に達するなど肌の弾力性を低下させてシミやシワを作ります。
中でも、高齢になるほど皮膚に発症する「日光角化症」が肌荒れや皮膚がんの発生原因ともなります。いわば人体細胞のDNAに傷がつく状態で、長年にわたり紫外線で繰り返し傷つけられると、がん遺伝子が突然変異で増殖することがあります。
さらに気をつけてほしいのが「湿布を貼って紫外線を浴びる」ことです。ケトプロフェンという成分を含む湿布を貼ると、肌が光線過敏症という副作用により、必要以上に赤くただれてしまいます。ケトプロフェンは湿布を剥がしたあとでも2週間程度、肌に残っていますので、今の時期は特に注意してください。
怖いのは皮膚がんだけではありません。目の水晶体が白く濁る「白内障」も、紫外線の影響が強いことが知られています。特に高齢者の場合、メラニン色素を作る作用が衰えていますので、紫外線の強い場所は避けてください。避けられない場合は日焼け止めを塗るなど、強い紫外線を浴びないように心がけましょう。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。