7月19日にスタートしたドラマ「ハゲタカ」(テレビ朝日系)。主人公の“ハゲタカ”と呼ばれる鷲津政彦を綾野剛が演じているが、すでに2007年2月にはNHKで大森南朋主演の全6話ドラマとして放送。09年には同じく大森主演で映画にもなっている。NHKはこのドラマで第44回ギャラクシー賞「優秀賞」、第12回アジア・テレビジョン・アワードシリーズドラマ部門「最優秀賞」など多くの賞を受賞。大森も俳優としての評価が急上昇したと言われている。
今回のテレビ朝日によるドラマ化がNHK版と大きく違うのが、沢尻エリカ演じるホテルウーマン・松平貴子の存在だ。NHK版が男臭い骨太なドラマだったのに対し、テレ朝版では沢尻演じる松平が綾野演じる鷲津の最大の敵へと成長するプロセスが描かれていることで“華と艶”が加味されているのだ。
ところで、09年の映画版では、玉山鉄二が残留日本人孤児三世の投資家・劉一華を好演。拝金主義でのし上がるも、最後は行きずりの強盗に刺され、息も絶え絶えに泥にまみれながら札束をかき集める姿が印象的だった。
「実はこの時の行きずりの強盗を演じていたのが滝藤賢一だったんです。今や破竹の勢いでドラマ、映画、CM等で活躍中の滝藤ですが、この映画を撮影していた時点では俳優の収入だけでは生活できず、レンタルビデオ店、運送会社、居酒屋とアルバイトのかけもちをしていたそうです。テレ朝版『ハゲタカ』では、綾野演じる鷲津の生きざまがより鮮烈に描かれているようですが、映画版を見ている人にとっては、このドラマには出演していない滝藤賢一という俳優の生きざまをも、思い出さずにはいられません」(映画誌ライター)
出演していないドラマにさえ存在感を漂わせる。これこそが、滝藤の恐るべき“俳優力”なのかもしれない。