7月に発売された「清原和博 告白」(文藝春秋刊)の売れ行きが好調だという。世間では、記念すべき夏の甲子園100回大会での熱戦が繰り広げられたばかりだが、その甲子園歴史館から清原氏関係の品は撤去され、今年の記念すべき大会の始球式にもOBのリストにも、その名はなかった。
同書で浮き彫りにされているのはそんな清原氏の“番長”と呼ばれた世間での強いイメージとは真逆の、ひとり孤独に薬物と闘う彼の本音だ。
引退後しばらくは、家族と過ごす時間が増え、それは幸せな時間だった清原氏は、しかし一方で野球以外に打ち込めるものがなかった。「ホームランより自分を満たしてくれるものはない」。心の奥にぽっかりと満たされない空虚感から酒に溺れた。そんな時に法律違反のクスリをつい使ってしまったというのだ。最初は軽い気持ちだったが、〈支配されて〉しまい、〈闇の世界に入って〉いったという。
しかも、薬物を使っても、〈心にぽっかりと空いた穴〉は埋まらず〈薬の効果で一時的には嫌な自分を忘れることができただけ〉だった。ただ、そこまでどっぷり浸かっていたという認識は本人にはなく、薬を使っていない時は普通の状態で、家族にも影響を与えていないと思い込み、悩むのは一人の時だけだったと告白している。
「この本では、清原氏にとっての地獄は、週刊誌に薬物疑惑が報じられた後に、自宅に帰ると家族がいなくなっていたことが転機だったと強調されています。その後服用量は増し、それでも寂しさから薬はやめられず自死するしかないと、そのための刀を入手しようともしたとか。2016年の2月の逮捕後は、薬物と離れることはできているそうですが、まだ『生きていく力が湧いてきていない』とのこと。ただ、逮捕前から報じられていた反社会的勢力との接点や、離婚した前妻、そのほかの女性関係についての記述もほとんどなく、もう一つ彼が薬物に手を出してしまう背景についての説得力に疑問が残る読後感ですね」(スポーツライター)
PL学園時代、そしてプロ野球選手時代に残した功績も、その後の大きな過ちにより、帳消しにされたような扱いを受け続けている清原氏。当然の帰結ではあるが、さらなる疑問への説明やリハビリを含めた今後の行動で、苦境から抜け出せることを待ちたいところだ。
(島花鈴)