伊集院 今そうしたことをキチンと教える人も、なかなかいないからね。やっぱり大人になったら、若い者に「それは違うから」ってキチンと言ってやらなきゃダメなんだよ。「若い者は聞きやしない」って思ってるから言わないんだけど、それでも言ってやらなきゃダメなんだよ。でもみんな、教えることが億劫なんだよ(笑)。
それはもう言ったところで若い者は実際聞かないわけですよ(笑)。だけども聞かなくてもいいんだよ。若いヤツは昔から聞きやしないんだ。だけど「それでも言う」ってことが大事なんだよ。そのあと40歳くらいになって「アイツが言ってたこと合ってたな」、もしくは「間違いだったな」って思わせればいい。そのへんを間違えるんだよな、今の大人は。面倒だから何も言わない。
──とりわけ、伊集院さんは別れというのを、若いうちに知っておけと言われていますが‥‥。
伊集院 別れたことはいちばん身にしみますから。私が高校卒業して、明日は初めて生家を出て上京するって時、それまで5分以上父親とは話したことなかったけど初めて父親と長い時間話をしました。
父親は「自分は韓国から渡ってきて、脱走したりとか、おふくろと出会って‥‥」ってこれまでの生い立ちの話をしてくれた。そして、話が一区切りするたびに父親が「こうやっても俺は倒れなかったんだ、お前も倒れるな」って言うんです。そして最後にこう言ったんだよ、「今夜が、俺とお前が生きて会える最後かもしれないってことは忘れるな」って。その時、私は父親が死んだら大学やめて帰らなくてはいけないんだなと考えたんです。
それで翌朝、プラットホームで父親を見たら「行ってこい!」って感じで腕組んで。それで電車が動きだした瞬間、気づいたんだよね。「あのオヤジが死ぬわけがねえな」って(笑)。だから父親が言いたかったのは「お前も倒れるな!」って意味だったんだ。「東京に着いたら相当な覚悟で生きていかないとだめだぞ」ってことだったんです。