五輪招致には当然、莫大なカネがかかる。開催地として東京を選んでもらうために、IOC評価委員には、印象をよくしてもらうための「接待」が行われた。過去の五輪開催を巡っては、裏金疑惑や裏接待の存在が取りざたされたこともあるのだが‥‥。前出の招致委スタッフが内情を暴露する。
「3月6日に赤坂迎賓館で開かれた安倍晋三総理主催の豪勢な公式晩餐会の費用だけは総理官邸持ち。それ以外は招致委員の経費でしたが、IOC評価委員全員が宿泊先のパレスホテル東京から一歩も出歩きませんでした。IOC委員の滞在中、招致委員会が最も恐れていたのは、ヤミ接待があったと勘ぐられること。スペインやトルコの記者にいかがわしい現場の写真でも撮られたら一巻の終わりですからね。ただ、ホテルの中で何があったかについては緘口令が敷かれ、簡単にうかがい知ることができませんでした」
招致委員会がIOC評価委員14人の「接待」に、4日間で使った金額は約6億円に上ったという。招致経費が全体で75億円だから、全体のおよそ8%である。
今回のIOC視察には皇太子も応待しているが、実はこの件を巡っては、ひと悶着あったのだという。招致委スタッフが続ける。
「皇太子にはいわゆる政治活動をさせてはいけない、というお達しが宮内庁からあり、招致委員会との間でモメたようです。しかし、結局は、国際親善の一環として、という名目で押し切り、皇太子は評価委員と接見されました」
前出の澤、吉田の他にも、卓球・福原愛(24)、体操・内村航平(24)、フェンシング・太田雄貴(27)、柔道女子・松本薫(25)、重量挙げ女子・三宅宏美(27)ら、そうそうたるオリンピアンがプレゼンターとして動員されたうえ、皇太子までもが担ぎ出されたのである。さらには前述した晩餐会接待の安倍総理、トヨタ自動車の張富士夫会長ら政財界の大物が後押しするなど、各界の協力はリオデジャネイロに敗れた16年五輪招致の時とは比較にならないくらい手厚いものだった。
結果、IOCの発表による最終的な都民の開催支持率も70%となり、当初の「不人気ぶり」からは大幅に改善された、かに見える。
だが、前出・招致委スタッフは不安を口にするのだ。
「IOC評価委員の来日に合わせ、トルコから取材に来た報道陣と話しましたが、皆、一様に笑みを浮かべ、2020年の五輪招致は『イスタンブールの勝ち。ウチで決まりだ。東京に来て確信したよ』と言っていました。
母国の急激な経済発展に相当な自信があるようなんです。事実、招致委員会の内部には不穏な空気が流れており、私もどうもイスタンブールの勢いにはかなわない気がします」
かえすがえすも、レスリングと野球の恥さらしな罵り合いがマイナスイメージを加速させるようなことがあってはならない。
勝負は9月7日、ブエノスアイレスで決する。