決戦は帰国後、本当の勝負はこれからだ。
令和の怪物・佐々木朗希(大船渡=3年)がU-18野球ワールドカップ大会・韓国戦に先発したが、わずか17球、1イニングでの交代となってしまった(9月6日)。右手中指にできた血マメの再発が原因だが、永田裕治・代表監督の「無理をさせない」のコメントからして、これが高校生活の最後の登板となりそうだ。
「佐々木に対する評価は変わらない」と、日本のプロ野球関係者は語るが、ドラフト1位を誰にするのか、その最終判断が難しくなってきた。
「U-18大会で評価を上げたのは、西純矢(創志学園=3年)。もともと、打撃面にも光るものがあったが、投手としての完成度、守備に入った時の存在感も高い」(在京球団スカウト)
夏の甲子園大会で高評価を得た奥川恭伸(星稜=3年)もいる。佐々木か、奥川か? それとも、大舞台で強い西か…。しかし、その結論は9月半ばにも出されそうだ。
「U-18後、佐々木は家族会議を開き、進路表明の会見を行います。家族会議と言っても、彼は4月時点で『プロ1本』を明言しているので、進路は決まっています。スカウトたちは会見後、清宮の時と同様、球団ごとの個別面談を要請しようと思っています」(前出・在京球団スカウト)
プロ野球12球団は、個別面談で「育成ビジョン」を説明することになる。佐々木を育てた大船渡の国保陽平監督はクラブチーム、米独立リーグでのプレー経験がある。
また、現役時代にスポーツ科学を学んだことでソフトバンク・工藤公康監督も心酔する筑波大学の出身だ。トレーニングに関する知識は佐々木にも伝わっていると見るべきだろう。
「走り込み、基礎体力がどうのなんてアイマイな物言いをしたら、一発で見破られてしまいます。データや根拠に基づいたトレーニングメニューを説明しないと…」(球界関係者)
12球団スカウトは「10年に一人の逸材」と、佐々木を認めている。だが、夏の甲子園予選の岩手県大会決勝で故障を避けるための連投回避に加えて、今回の血マメだ。「体がまだできていない」という現状評価もある。マイナスで捉えるか、それとも、伸びしろも十分な将来性と捉えるか。「佐々木が故障したら、球団のせいにされそう」(前出・球界関係者)なんて声も聞かれた。
佐々木の育成には、球団のイメージも大きく影響してくる。故障しがちな令和の怪物に対し、一歩引いて見る球団も出てきそうだ。
(スポーツライター・飯山満)