翌日、ダルビッシュは中4日のマウンドに上がった。高校時代を仙台で過ごしたこともあり、第二の故郷に勇気を与えたいと、特別な思いで試合に望んでいた。Kスタでは今季3度目のマウンド。昨年までは「スタンドの赤いのが苦手」と語っていたが、今季負けがない。ところが、7回を投げ終え1─0でリードしている場面で、梨田昌孝監督は交代を告げた。
結局、次の回で後続が打たれて、ダルビッシュの17勝目は消えた。試合後のロッカーでダルビッシュは荒れた。後続が打たれたことよりも、100球そこそこで替えられたことへの悔しさに見えた。そんなヤワな投手ではないと言いたかったのかもしれないし、そう見えた自分に対するふがいなさだったのかもしれない。
開幕当初から「1人だけ次元が違う投手」という評価がされていた。他チームのスコアラーたちも「ダルビッシュから1点を取ることさえ大変」と頭を抱えるばかりだった。開幕戦こそ3失点で負け投手になったものの、その後は8連勝と向かうところ敵なし。圧巻は5月10日の楽天戦から続いていた連続イニング無失点で、記録はパ・リーグ2位(歴代では11位)の46イニングで止まり、パ・リーグ新記録となる4試合連続完封勝利も逃したが、その原因が暴投というのが、いかにもダルビッシュらしかった。
「低めに投げるとバッターに合わせられそうで嫌だった。空振りの取れるゾーンから、もうひと伸びしてしまった」
と本人は語ったが、同時に、ボール自体に違和感を感じてもいたようだ。翌日の新聞で白井球審は、このように述懐していた。
「ボールが滑るので、もっとボールを土でこねてほしいとダルビッシュに言われたが、試合前にもうやっているのでできないと答えた。しっくりこなかったのだろう」
つまり、しっくりきてさえいれば、無失点記録はさらに続いていた可能性が高い。逆に言えば、それだけ敏感な指先を持っているから、今の成績を残せるのであろう。繊細な指先のフィーリングによって、いろいろな球種を投げ分けているからだ。
とはいえ、本人は「記録はまったく気にしていない」とどこ吹く風。日ハム・吉井理人投手コーチも「そのあとに、あとを引かないのが今年のダルビッシュの成長」と認めるように、その後も順調に勝ち星を伸ばしている。開幕戦以外は自責点3点以上取られたことがないのだから、お手上げである。
「速い球で攻めるだけではないから的がしぼれない。彼の頭の中を割って見てみたい。超頭脳派の本格派投手とでも言うのでしょうか」
オリックスの依田栄二スコアラーも舌を巻くのだ。
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