「ファースト、セカンド、キャッチャーというのがね…」と、一塁手と二塁手のレギュラー争いを奮起させるような発言を巨人・原辰徳監督がしたのは、キャプテン・坂本勇人のことも思ってのことだった。
「原監督が一塁、二塁、捕手のレギュラーは“白紙”であることを表明したのは、1月20日のスタッフ会議後でした。この会議で各コーチと話し合って決めたのは、キャンプの一軍、二軍の選手の振り分けだけではありませんでした。坂本にとって大事なシーズンになることも確認されていたんです」(ベテラン記者)
確かに今年、坂本は順調に行けば達成できそうな記録がたくさんあるのだ。主だったものを挙げれば、2000本安打(現・1884本)=以下カッコ内は現在の記録=、350二塁打(348)、250本塁打(223本)、1000得点(983)、3000塁打(2943)など…。名球会入りもかかった「2000本安打」に関しては、プロ野球記録を塗り替える可能性もある。
「2000本安打達成の最年少記録は、東京(現・ロッテ)の榎本喜八氏が持つ31歳7カ月です。坂本は昨年12月14日に31歳になっており、7月13日までに116本のヒットを打てば、新記録となります」(前出・ベテラン記者)
そんな節目の記録達成が続きそうな坂本に対し、なぜ、原監督の「一塁、二塁、捕手のレギュラー争い」発言が影響してくるかというと、特にセカンドがそうなのだが、誰がレギュラーをつかむかによって、坂本の打順が固定するかどうかも、大きく変わってくるからだ。
そして、前出のベテラン芸能記者によれば、「原監督の口から名前は出ませんでしたが、理想は左バッターの吉川尚がレギュラーをつかむことだと思われます」と予想する声は少なくないという。
というのも、俊足の吉川尚が1番に定着すれば、2番・坂本、3番・丸、4番・岡本と「左・右・左・右」のジグザグ打線になる。19年シーズン、原監督は攻撃的2番バッターとして、1番が出塁したあとはエンドランなどの強攻策を用いており、坂本には積極的にバットを振らせてきたからだ。
「セカンドのレギュラー争いに加わる選手は1番タイプが多いようです。たとえ吉川尚がレギュラーをつかめず、他の選手がレギュラーを獲得したとしても、19年シーズンのような『セカンドは日替わり状態』を脱すれば、坂本の打順を固定することができます。これは主に3番を打ってきた丸にもあてはまります」(前出・ベテラン記者)
二塁手が日替わりでは、ショート・坂本の守備面での負担軽減にはならない。原監督はセカンド、ファーストのレギュラーが決まることによって、坂本の記録更新も近づくという“相乗効果”を訴えたかったようである。坂本も、チームが勝って記録達成の表彰に臨みたいはずだ。
(スポーツライター・飯山満)