“不遇のキャプテン”だった坂本勇人が、巨人の歴史を塗り替える。
坂本が連敗を止める35号アーチを放ったのは9月7日。初回には連敗のイヤな雰囲気を断ち切る先制打も放っており、「困った時のキャプテン」と、その勝負強さが再評価された。
「坂本がキャプテンになって以来、奇しくも一度もリーグ優勝をしていません。だから、今季の優勝に懸けていると思います」(スポーツ紙記者)
しかし、巨人のチーム関係者は「別の快挙」に注目していた。
「巨人の生え抜きの右バッターで『シーズン40本塁打』に到達した選手はいません。今年の坂本なら、40本に届くかもしれません」(球界関係者)
実現すれば、球団創設から85年目、ついに歴史が塗り替えられるわけだ。原辰徳監督、中畑清氏も40本には届かなかった。あの長嶋茂雄氏でも1968年の39本が最高で、「あと1本」が出なかった。巨人が本拠地球場としてきた後楽園球場、東京ドームだが、「レフト方向だけが深い」なんてことはない。また、左バッターに有利な形態にもなっていない。単なる偶然でしかないのだが、40本到達と同時に、坂本は「巨人史上最高の右バッター」ということなる。
「坂本はどちらかといえば、チャンスメーカーであり、長打力よりも首位打者タイプ」(前出・球界関係者)
今季の坂本は打撃フォームをフルスイングするスタイルに改造している。本塁打を狙っての改造ではなく、自身の打撃成績を上げるためだった。35号アーチはセ・リーグ本塁打王争いのトップタイに並ぶ数値。坂本は本塁打王争いのダークホース的存在でもあったが、127試合目での35本目。残り13試合で「あと5本」は十分に可能だ。
「キャプテンとして、単に優勝を経験するよりも『伝説の記録』を達成しての優勝となれば、坂本の存在感は絶大です。次期監督と言われる阿部慎之助にも近づくでしょう」(前出・球界関係者)
伝説超えまで、あと5本。原監督は優勝を引き換えに4番バッターだったメンツを喪失してしまうのか? 優勝マジックナンバーのカウントダウンよりも、坂本の伝説超えのほうが興味深い。
(スポーツライター・飯山満)