演劇ライターが宝塚時代の真矢の魅力をこう語る。
「当時の宝塚は、娘役に限らず、男役でも派手なメイクを施すのが定石でした。ところが真矢さんは、それまでにないナチュラルメイクや長髪を取り入れ、衣装も独特の着こなしをするなど斬新な発想で新風を吹き込んだ。『宝塚』の魅力をより多くの人たちに伝えようと篠山紀信とのタッグで97年には撮り下ろしの写真集『Guy』(宝塚歌劇団刊)を発売。当時はタブーとされた『男役による女装』を披露して話題を集めました。さらに翌98年、現役タカラジェンヌとしては初となる日本武道館でのソロコンサート『MIKI in BUDOKAN』を実現。つんく♂とタッグを組んで、シャ乱Qの『ズルイ女』や『すみれの花咲く頃』のロックバージョンなどを熱唱して、観客を魅了した」
このような実績が認められ、14年の宝塚歌劇団100周年の記念祭典では司会を務めるなど、関係者、ファンの間ではレジェンドとしての名声をとどろかせてきた。
だが、98年の宝塚退団後は、それまでの輝かしいキャリアからは想像もできない苦難の道を歩むことになる。
大手芸能事務所に在籍して女優活動をスタートさせたが、なんと戦力外通告を受けてクビになってしまうのだ。
「事務所の期待は大きかったのですが、真矢本人が『新たな分野に挑戦したい』とファンクラブを解散し、『2年間は舞台には立たない』と決めたんです。ミュージカルや舞台のオファーを断り続けた結果、仕事がうまく回らなかった。当時は旅番組で海外の秘境の地に行ったり、バラエティー番組のお見合い企画に出演したりと、近年のマルチタレントぶりの下地を作ったとも言えますが、周囲の期待とはまるで違いました」(演劇ライター)
所属事務所クビでアラフォーとなれば、再起を図るには容易ではない状況だったが、みずから道を切り開いたのだ。
「03年に公開された映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(東宝)のオーディションにフリーの立場で臨んだんです。結果、織田裕二と対峙する非情な女性管理官を演じて注目を集めました。オーディションには知人に借りたスーツで行ったそうです」(演劇ライター)
同作のヒットとともに、女優として再び脚光を浴びた真矢は数々のドラマ、映画、CMに出演して存在感を増していく。新たな芸能プロにも所属できたのだが‥‥。
「特に08~10年に流れた悠香『茶のしずく石鹸』のCMは『あきらめないで』のセリフで話題を呼びましたが、商品に欠陥があり、集団訴訟という事態になった。もちろん真矢に非はありませんが、とんだトバッチリでした。その後も事務所社長と方向性を巡ってケンカ別れ。再び所属事務所を失ったところを拾ってくれたのがオスカーでした」(芸能プロ関係者)
その恩返しで、窮地に陥った事務所の救世主になろうとは、できすぎたストーリーだろうか。