「バックスクリーン直撃談!」合併号スペシャルは、85年のV戦士対談が実現! 首位・巨人を追撃する阪神には、28年ぶりの日本一の期待がかかる。だが、2人は「巨人のほうが一枚も二枚も上」と、これまでの戦いぶりを厳しく叱咤。鍵となる「4番打者」について激論を戦わせた!
掛布 真弓さんから見て今年の阪神はどう?
真弓 投手陣が予想よりもよくやってるね。今年は藤川球児がいなくなったというのもあるし、開幕の時から先発陣が一つか二つ足りないかな、と思ってたから。
掛布 確かに今年は投手陣がいい。そんなに大きく崩れないもんね。ただ、セ・リーグは巨人と阪神の2強だって言われているけど、それでもチーム力の差は大きいと思う。
真弓 今は巨人のほうが戦力的には一枚も二枚も上。余裕があるもん。
掛布 それでも交流戦ぐらいから新井貴浩が調子を取り戻してきたのはデカい。もともと4番を打った男だから、あれくらいの成績を残してくれないと困るけど。
真弓 今年はマートンが4番に座っていい働きをしてくれているから、5番に入った貴浩の荷は軽いはず。カケの言うとおり、新井は能力のある選手だから、調子を取り戻せばそれなりの力を発揮してくれる。
掛布 新井が今ぐらいの成績をずっと残してくれれば4番を打たせても大丈夫でしょう。でも、今はまだ4番に入れてもきっと彼は打てない。それは前監督がイヤというほどわかってんじゃない(笑)。
真弓 阪神には新井しかいないし、新井に何とかしてくれという気持ちが強かった。結局、周りからそうガーガー言われるのを耐えるのが本人はしんどかったんやと思う。
掛布 そういえば、今年の阪神のキャンプで新井に指導してたそうだけど、何を話したの?
真弓 彼は結果ばかりを言われ続けている選手だから、下手な打ち方をしたくないというのが根本にある。スライダーもまっすぐもアウトコースもインコースも、とにかく全部の球を完璧に打ちたいという練習をしてたの。だから相手からタイミングをズラされたりするわけ。要はそんな時に、どんな対応をするかをしっかり練習しておかないとダメってこと。バットの届かないようなアウトコースの球が来たら、とにかくバットを投げつけてでも当てるぐらいの気持ちでいけって。それをあの時、彼に言ったの。
掛布 バッターは、どこまでいってもそれを考えるよね。
真弓 完璧を目指すと、まずスランプになる。
掛布 それはポイントを近くで打とうとしすぎてるからでしょ。もちろん、動くものだからしっかりとポイントを見極めて打てるようにするに越したことはないけど、絶対にもっと楽に打てるポイントがあるはず。どれだけコントロールのいい投手でも130キロのボールが全てコーナーに決まるわけじゃない。必ず投げミスがある。それなのに全部を完璧に狙おうとして、難しく打とうとする。新井なんか、引きつけて打とうとして崩れる典型的なタイプだよね。
真弓 泳ぐスライダーを打つには、ある程度ヘッドを出すのを我慢して、最後にパッと解く必要がある。それができるかできないかがいい打者と悪い打者の違いかな。
掛布 分岐点だね。
真弓 そういえば昔、腹立って新井を5番にしたり6番にしたりしたことあったけどね。
掛布 あったね(笑)。
真弓 「守備要員はいらないですか?」って言ってきたの。その前からも打率が悪くなってきてたから、本人は気弱になってたかもしれないけど、そんなモチベーションだったら、先に外してやれって守備を外したのよ。
掛布 俺も悪い時もいい時もあったけど、4番は打ち続けるプライドを持っていないとダメだよね。
真弓 4番っていうのは、守備はエラーをしてもしかたがない、俺が打って勝てばいいくらいの気持ちでやらないとチームを引っ張っていけない。それなのに新井は「僕はファーストに回ってもいいですよ」って言うんだもん。
掛布 それはいかん(笑)。俺も一塁を守りたいと言われたら怒るよ。