真弓 85年でいえば、俺、現役で1番を打ってる時にどうしても塁に出たいと思ってボール球に手が出ちゃってたんだよね。それでどうしたらと考えて気づいたんだけど、実は2ストライクまでホームランを狙っていったほうが、ボール球に手を出さずに済むんだよ。
掛布 ああ、ボールをしぼれるからね。
真弓 よく「低めに手を出すな」とか言われるけど、そもそもホームランを狙ってたら低めのボールなんかには手は出さないのよ。ホームラン競争するつもりで打席に立てば、意外とホームランが打てたり、もちろんヒットも打てる。でも、最近の選手は利口になったか知らんけど、1球目からアウトコースのスライダーを、右打者だったらライト前に狙って、結局それを引っ掛けてセカンドゴロやファーストゴロにしちゃうんだよね。
掛布 それは俺もすごく思うね。
真弓 しかも、それをランナーがいるからって4番打者がやるでしょ。俺は、4番だったらランナーがいるならホームランを狙えよって思っちゃうわけ。調子の悪い時はホームラン狙ったほうが納得したりする。
掛布 新井貴浩も、調子がいいのに進塁打を打ったりするんだよなあ。調子がいいなら進塁打なんて狙うなよって思うけど。
真弓 5番、6番を信頼してたら、そんなことしなくてもいいんだけどね。
掛布 それは確かにそう。ただ、5番、6番もヒットは打つよ。吉田義男監督はそういう考えだったよね。ノーアウト二塁だと4番、5番、6番でヒットを1本でも打てば点が入る。そんな時に吉田さんは一切サインを出さなかった。とにかく打て、と。
真弓 そうだった、そうだった。
掛布 ところで、阪神の元1番打者から見て、今の1番はどうなの?
真弓 1番は打線をつなげたいと力みすぎて、凡打することがよくあるんだよね。そういった意味で言うと、西岡はしっかり塁に出るし、1番らしい1番だね。とにかく勢いがある。
掛布 僕の目線で言うと、4番打者っていうのは1番打者の結果を見てから、いろんなことを考えながら打席の準備をするわけ。その時に1番打者の1打席目で、アウトになるにせよヒットになるにせよ、4番の腰がベンチからグッて浮くかどうか。「おっ」と思う瞬間があるんだよね。4番をベンチから立たせるような1番じゃなきゃダメなんだよ。
真弓 そう、それが1番の役目。俺は5番や6番も打ったことあるけど、初回に自分の打席が来ると驚くもんね。「準備しときなさい」とか言われるんだけど、いつも回ってこないから準備してないんだよね。そういう時に回ってきたら、だいたい打てない(笑)。
掛布 だから1番は頭も体も休ませちゃいけないんだけど、西岡はそれができている。あいつは初回の出塁率が高いでしょ。マートンも準備をしているタイプだし、新井貴浩もそう。
真弓 そうだよね。