エンタメ

我が青春の週刊少年ジャンプ(6)ヒット作誕生の意外なワケ

 堀江が強く「北斗の拳」の連載を望んだのは、もちろん原の才能にほれ込んでのことだ。そして、ヒットへの確信があったはずだ。

 だが、堀江は冗談めかしてこう語る。

「とにかく江口先生の担当を外れたくてね(笑)」

 この「江口先生」とは、本連載第1回に登場してもらった漫画家、江口寿史だ。

 江口は遅筆ゆえに、担当する編集者の負担が大きく、持ち回りのように何度も担当が代えられた。その中で、最も長く担当していたのが堀江だった。

「締め切り前の金曜から日曜までは、付きっきりで原稿を待つ。当然、徹夜なんだけど、江口先生の後ろで原稿を待っていると、アシスタントが寄ってきて、僕のほうをのぞき込んで『先生、起きています!』って報告に行くの。たまに、僕が寝ていると『今だ!』って江口先生も寝ちゃう。だから、起きているってアピールするためにいつも足を揺らしていたんだけど、おかげで足を揺らしたまま寝られるようになったぐらい。でも、江口先生もさぁ、ペンを動かしている振りをしながら寝られるようになっちゃってね。1度、その状態でお互い寝ちゃって原稿を落としたこともあった」(堀江)

 そんな状態なので、締め切り明けの2日間は仕事にならない。その後、編集部へ出て2日で通常業務をこなすと、また江口に張り付きとなる。20代半ばの若手とはいえ、かなりのハードワークである。

「当時、ジャンプでは自分で連載を立ち上げると、そのまま担当編集になる。でも、担当するのは2~3本が限界だから、連載を立ち上げれば、今までの担当作は別の人にバトンタッチすることになる。それで、とにかく急いでたくさん連載を立ち上げて、江口先生の担当を外れようとしていたんだよ(笑)」(堀江)

 ジャンプファンを喜ばせるためのリップサービスなのだろう。ただし、この時期の堀江は「北斗の拳」だけでなく、複数の連載作品を担当していたのも事実である。北条司の「キャッツ・アイ」(81~84年連載)もその一つだ。江口の遅筆がなければ、我々を魅了した作品群は内容も別のものになっていた可能性もある。いや、連載が始まっていなかったかもしれない。

 つい、そんなことを考えてしまう。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
獲得球団現れず…田中将大「1億円の大台」に固執なら「バナナの叩き売り」状態になる
2
【カナダの湖で大騒動】熊より巨大な肉食獣「ユーコン・ビーバーイーター」は巨大なナマケモノだった
3
4種類の抗ガン剤と副作用、そしてかかった治療費は…/東大病院でガン治療を受けた猫③
4
田中将大「日本で移籍先ナシ」で急浮上した「来春メジャーキャンプ招待選手」の選択肢
5
「大連敗ストップ」太川陽介に追い風が吹く「九州でバスVS鉄道」激突の「大分と熊本の恩恵」