ストーリーなども、
「先のことなんて全然考えてなかったよ」
と、宮下は振り返る。
「打ち合わせもそんなにしてなかったしね。いつもネーム(漫画の基本構成を描いた下書き)は描いて編集者に見せてたんだけど、一度、見せたネームと全然違う話を描いて出したこともあったよ(笑)」
漫画は編集者がネームをチェックしてオーケーを出し、それから仕上げるのが昔も今も業界の常識。しかも、当時はデジタル技術が浸透しておらず、漫画に使われるフキダシなどの写植の文字も業者に頼んで印刷し、原稿に手で貼り付けていたからなおさらだ。ところが、ネームと違う原稿が出てきたのだから、写植から用意し直すことになったのである。
当然編集部は大慌てとなるが、とにかく時間のない週刊連載。「しかたない」と、大慌てで間に合わせ、原稿は変更された内容で掲載されたという。
突然の連載決定から慌ただしい中で回を重ねていった「私立極道高校」は、着実に人気を獲得していった。
ところが、このデビュー作は、ある事件で突然幕を閉じることとなる。
作中に実在の高校名が使われていたことが発覚し、新聞などに報じられ大問題となったのだ。教育委員会からの抗議などもあり、該当話が掲載された号のジャンプは回収され、作品自体も打ち切りとなってしまった。実はこの騒動、宮下自身も報道を見て、初めて知ったという。
「新聞を見て、『あれ?』ってなってね。アシスタントが描いてた部分で、実在する高校だったなんて知らなくて。俺のチェックが甘かったよ」