NHKの前田晃伸会長の定例会見が6月11日、同局で行われた。年末の紅白歌合戦が実施できるかどうかについて聞かれた会長は、放送については前向きな姿勢を明かしたものの、新型コロナウイルス感染拡大によって「かなり深刻な状況」になっていることを訴えている。
「本来であれば、夏に東京五輪が開催され、競技で活躍した選手らが特別審査員を務め、年末で活動休止を宣言した嵐が白組司会の他、大トリで出場。華々しくフィナーレを飾るという青写真でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、国民生活は激変。東京五輪は延期、企業の倒産、正社員、非正規労働者の解雇、巣ごもりによる未曽有の不況に突入した。例年のような大仕掛けな演出やお祭り騒ぎ企画はなくなり、3密を避けるため出場組数を減らしたり、事前収録、リモート出演に切り替えるなどの措置が取られるはず。東京・渋谷のNHKホールでの抽選入場したNHK受信契約者からなる観客を集めての生放送は、不可能かもしれません」(テレビ雑誌記者)
会長は「年末はどんな状況になっているかは分かりませんので、例年通りとはいかないと思います」と言葉を選びながら、「今年も紅白をお届けできるように準備をしていきたい」と実施については前向きに考えていることを明かした。
NHKといえば、国民からの放送受信料によって経営が成り立っている。高すぎる受信料については長年不満が噴出していたが、今年1月の会長就任時の会見で、受信料値下げについて「下げればいいということではない」と突っぱね、今もその姿勢は変わらない。
「11日の会見で驚かされたのは、今年度第1期受信料契約総数が8万5000件、衛星契約が2万8000件激減したこと。これまでに例を見ない落ち込みようで、コロナ禍で営業ができなかったこと、ホテルなど多数の事業者が契約解除したことが原因とされます。緊急事態宣言発令中、テレビ番組は収録不可能となり、再放送や総集編、リモート放送に移行せざるを得ない状況になりました。そんななか、テレビ視聴に背を向けた人々がスマホでのネット閲覧やYouTube視聴に流れたことも大きい。漫然とテレビをつけているだけのながら視聴者は、先細り必至の状況と言えます」(芸能ライター)
前田会長は「受信料の徴収がこのまま伸びることはなく、むしろ下がると見ている。コストを見直し、番組などの作り方の意識改革が必要」と会見で危機感を前面に押し出していた。テレビ不要を選択した国民の気持ちをひっくり返すことができるか。年末の紅白がその試金石になるかもしれない。(塩勢知央)