テリー ちょっと話は変わりますけども、デキのいい息子さんが2人いらっしゃいますよね。
麿 ありがとうございます。
テリー 長男が映画監督の大森立嗣さん、次男が俳優の大森南朋さん。南朋さんは、今、本当に人気の役者さんで。
麿 だから、よく「お前は親の七光じゃなくて、子の七光だな」って言われますよ。「はい、そうでございます」と。
テリー いやいや、そんなことないですけど。息子さんの演技を見て、親として、あるいは役者の先輩として、何か言ったりするんですか。
麿 いやぁ、何も言いません。この世界は女の問題、クスリの問題、いろいろありますから、「おい、クスリはやるなよ」とか「まぁ、女はうまいことやれば何とかなる」なんてことは言いましたけど。
テリー 親子の会話とは思えないですね。
麿 まぁ、ほとんど僕はあけすけですから。「クスリなんかやったら、お前、殺すぞ」とかね。
テリー 昔からそういう父親だったんですか。
麿 ほとんど教育みたいなことは何もしてないですね。2人が子供の頃に、家、出ちゃってますから。
テリー あっ、そうなんですね。
麿 当時は、芝居や踊りのほうでカーッてなってるし、ほとんど稽古場にいまして。
テリー へぇ。
麿 だから「ああいう立派な息子さんを育てるにはどうしたらいいですか」と聞かれますと、「ほったらかしがいいんじゃないですか」と答えてます。
テリー じゃあ、子供の頃は2人とあんまり会ってないんですか。
麿 たまに稽古場に遊びに来たりしてましたけどね。おかげで、あんまり親父がダラーッとしたところは見てないようですけども。
テリー あぁ、そうか。普通は子供って家でダラーッとしてるお父さんを見て育ちますけど、2人は働いている麿さんを見て育ったわけだ。
麿 まぁ「何か知らんけど、やっとるなぁ」とか思ってたんじゃないですかね。下のほう(南朋)は学校の先生に「お父さんの職業の絵を描きなさい」って言われて、真っ白けの幽霊みたいな絵を描いて「うちのお父さん、お化けです」って言って、呼び出されたみたいですけどね。
テリー ハハハハハ。
麿 僕が親父らしいことを言ったのは「友達は選べよ。いい友達を作れ」ぐらいじゃないですかね。あとは「喧嘩は強くな」とか「女は泣かすなよ」とか、そんな程度でね。
テリー 長男の立嗣さんの監督作(まほろ駅前多田便利軒)で、南朋さんと共演されてるじゃないですか。そういう現場ってどんな感じなんですか。
麿 僕、芝居がちょっとオーバーになっちゃう時があるんですよ。そうすると、監督はちゃんと演出しますよ。「親父、普通にやってくれ」って。
テリー そんなこと言われちゃうんですか。
麿 言われますよ。「ちょっとオーバーじゃないか」とかね。素直に「はい」って言いますけど。まぁ、彼には彼の全体のイメージがありますからね。
テリー いい関係ですね。
麿 うーん、まぁ、でも、いい気持ちですよ、息子に指図されるのは。そんなに現場を騒がしてもしょうがないし。「監督、どうしたらいいでしょうか」とか言いながら、おとなしくやらせてもらってます。