女優の竹内結子さんが40歳の若さで急逝したのは9月27日。96年のデビュー以来、70作品以上のドラマや映画に出演。03年から3年連続で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞するなど、実力派のトップ女優として君臨し続けてきた。中でも観客を感動の渦に巻き込む「ラブシーン」には定評がある。その「厳選8作品」を3回に分けてプレイバックする。
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結婚、出産を経た07年、女優復帰作となったのが「サイドカーに犬」(ビターズ・エンド)だった。芥川賞作家・長嶋有氏の同名小説を映画化したもので、強めのパーマをあて、タバコを吹かしながら「好きなものを嫌いになるほうが難しい」といったセリフも吐く不貞相手役を好演。キネマ旬報ベスト・テンのほか、数多くの主演女優賞に輝いた大ヒット作品だ。映画ライターの前田有一氏は出来栄えについてこう太鼓判を押す。
「自由奔放でサバサバした女性をみごとに演じています。今までの役柄を考えると、まさに正反対で正直、ビックリしました。30代になってからは『カッコイイ女性』を演じるイメージがありますが、27歳の時に出演したこの作品がきっかけなんです。竹内さんの最高傑作であり、最終形態と言ってもいいでしょう」
30歳を前にして、かわいいだけでなく「強い女性」も演じる力量を身につけた、その代表作と言えるのがドラマ「ストロベリーナイト」(10年、フジテレビ系)だろう。
警視庁捜査一課殺人犯捜査十係で主任を務める姫川玲子役をみごとに演じ、13年には映画版「ストロベリーナイト」(東宝)が公開。ドラマでは見ることのできない、大沢たかおとの禁断の車の中での情交シーンが世に衝撃を与えた。
「女刑事にもかかわらず、ヤクザの幹部(大沢)に心を奪われ、車の中で愛し合う。みずからキスを求めていき、覆いかぶさった大沢の背中の入れ墨で彼女の表情しか見ることはできませんが、複雑な心境をみごとに表現しています。さらにそのあと、帰宅して一人でシャワーを浴びる場面では、強さの中にもモロさを感じさせるとても魅力的な演技でした」(映画評論家・秋本鉄次氏)
この映画のすごいところは、2人の行為で車が揺れる場面を、竹内に恋心を抱く部下(西島秀俊)が黙って見ていることだ。
「今までの作品にはない変化球でした。いわゆる『寝取られ系』で、ラブシーンのバリエーションにいろんな技が使われていたと思います」(前田氏)
昨年公開された映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」(東宝)では、香港マフィアの女帝役で、三浦春馬(享年30)からのキスを寸前でかわす、まさに「氷姫」の異名にふさわしいミステリアスな女性も熱演している。
「ここまでキスシーンが上手な女優は、日本映画界にはいません。まさに『ラブシーンの女王』です。そんな女優を失ってしまったのは、本当に残念です」(前田氏)
女優デビューから24年、ハジける笑顔から艶っぽい表情まで、幅広く届けてくれた竹内結子。あまりにも早すぎる死だった。合掌。