女優の竹内結子さんが40歳の若さで急逝したのは9月27日。96年のデビュー以来、70作品以上のドラマや映画に出演。03年から3年連続で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞するなど、実力派のトップ女優として君臨し続けてきた。中でも観客を感動の渦に巻き込む「ラブシーン」には定評がある。その「厳選8作品」を3回に分けてプレイバックする。
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ドラマだけではなく、映画界へ目を向けると、見るものを引き込む竹内の演技力はさらに輝きを増す。
04年公開の「いま、会いにゆきます」(東宝)は、最愛の妻・澪(竹内)を亡くした中村獅童演じる巧と息子・佑司のもとに、雨の季節の6週間だけ、妻が戻ってくるというヒューマンラブストーリーだ。
興行収入48億円の大ヒットを記録し、同年の邦画ランキングでベスト3入り。竹内は日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を2年連続で受賞した。映画ライターの前田有一氏が話す。
「竹内さんの『ウブ』な地の部分を見ることができますし、僕はこの作品を『竹内結子のファン製造機』と呼んでいるんです。ひまわり畑の中で唇を交わすラストシーンで涙した人も多いのではないでしょうか」
この映画で共演した中村と竹内は翌年、結婚を発表。当時は映画さながら、お似合いの夫婦という声が大半だった。
「映画でキスをした際、中村は『体に電流が走った』ほど、竹内にメロメロになったそうです。実は中村だけではなく、彼女とキスシーンを演じた相手は、みんなそうだったのかもしれませんね」(映画関係者)
共演者を骨抜きにするその魅力は、いったいどのようなものだったのか。前田氏が解説する。
「竹内さんは特徴的なラブシーンを演じるんです。女優さんは何日も前からキスシーンがあることはわかっているわけですから『覚悟がある表情』をする。ですが竹内さんは、そういったそぶりをまったくしない。相手の顔が間近にくると、数センチだけ後ろにサッと引く。そして受け止める。まさに『受け身の情熱キス』ですね」
その「受け身の情熱キス」をふんだんに見せつけたのが、05年に公開された妻夫木聡主演の「春の雪」(東宝)だ。華族や爵位が残る大正初期の貴族社会で、身分の違いに悩み、結ばれない運命と知りつつも体を重ね合い、愛を育んでいくという悲しい物語である。
映画評論家の秋本鉄次氏が感嘆したのは、2人が密会するシーンで、“隠れた艶っぽさ”があったとして、こう話す。
「畳の上で着物をはだけさせながら、最初は『いけません。こんなこと…』と抵抗を示すも、徐々に受け入れて舌を絡ませ合う」
竹内についてはその口元が色香があり「ステキな女優」だとして、「この作品では、それがより引き立っていたと思います」と秋本氏は続けた。前出の前田氏は、
「春の雪」についてこう評する。
「日本映画ですが、カメラマンが台湾人ということもあり、色合いがオリエンタル。和風とはまた違ったアジア的なよさがあり、国際レベルの映画だと思いますよ」
この映画は第18回東京国際映画祭、第10回釜山国際映画祭でも上映されて話題を呼んだ。