ダウンタウンやウッチャンナンチャンら「第三世代」が台頭した80年代後半から、若手のお笑いは「寄席」よりも「ライブ」と呼ばれることが多くなった。それにより会場には女子高生などの黄色い歓声が飛び交うようになったのだ。それと同時に、終演後の「出待ち」によるプレゼント合戦も熾烈を極めた。
「一番安価で、だけど確実に芸人に喜ばれるのが『タバコ』でしたね。今では1箱500円を超えますが、90年代までは300円程度で女子中高生にも買える金額。芸人の喫煙率は高いし、それぞれの好きな銘柄を聞いてプレゼントすることが多かった」(構成作家)
ところが、出待ちの場でファンたちの“視殺戦”が始まるようになると、高額のプレゼントで気を引こうとする子が続出する。
「今は個性派のクールな俳優で活躍する阪田マサノブは、90年当時に『Z-BEAM』というコンビを組んでいて、東京のライブシーンでは『爆笑問題』と並んで熱烈な追っかけが多かった。で、ある女子大生のファンが1着30万円のスーツを贈り、芸人の中でも大きな話題となりました」(前出・放送作家)
そして95年、世間的には無名でも、よく練られたコントとさわやかなルックスでライブシーンの人気を集めていたのが「アンジャッシュ」だ。特にお笑い界きってのイケメンと呼ばれた渡部建には、出待ちのファンが殺到した。10代の子が多く、少ないお小遣いからタバコやお菓子などを差し入れしていたという。ところが、渡部はニコリともせず、冷淡に言い放ったと同世代の女性芸人が言った。
「渡部君はファンの子に対し『プレゼントくれるんだったらBEAMSの服にしてくれる?』と、堂々と言ったの。あんな高級ブランドを学生がおいそれと買えるわけもなく、その話が広まったことから一時的に出待ちが激減したわね」
今回の多重不貞騒動でも「見下した態度」が焦点になったが、その兆候はすでに表れていたようだ。