プロ野球、バッターにとって打率「3割」超えが一流か否かをはかる物差しの1つだと言っても過言ではないだろう。
2020年、NPBの打率ランキングを振り返ると、パ・リーグでは1位の吉田正尚(オリックス・バファローズ)の「.350」に始まり、上位4名までが3割打者。セ・リーグでは、1位の佐野恵太(横浜DeNAベイスターズ)の「.328」から3割打者は8位の鈴木誠也(広島東洋カープ)までとなり、打率「3割」がいかに高い壁であるかということがわかる。
そんな「3割の壁」をプロ通算16年間で5度超え、最多安打も3度獲った経歴を持つ、元プロ野球選手の田尾安志氏が、みずからのYouTubeチャンネル〈田尾安志【TAO CHANNEL】公式YouTube〉で、「.303」と初の3割超えを果たした1981年を振り返ったところ、その前年に悲しい出来事があったことが明かされた。
1月6日に〈【波乱万丈】プロ入り6年目。初の3割超えに秘められた悲しい過去〉とタイトルをつけた投稿回がそれだ。
田尾氏にとって、80年はシーズン141安打とプロ入り初の3ケタ安打も放っており、打率3割も目前と上々であったが、3つ年下の弟を骨髄炎で亡くす年でもあった。
3割の期待がかかる試合が続く田尾氏を両親も気兼ねしたそうで、弟の状態を告げられずにいたが、シーズン終盤に親戚からその報を受けた田尾氏は、「3割なんて小さいことだ。そんなのいつでも打つんだから」と両親に豪語、残り2試合を放棄して帰省し、打率「.299」でシーズンを終えた。
しかし、亡くなった弟さんから「大きなエネルギーを頂いた」と語る田尾氏は、翌年に3割超えをみごとに達成し、親への約束を果たせホッとしたと振り返った。
有言実行の男前なエピソードを聞かせてくれた田尾氏。弟さんも草葉の陰で喜んでいるのではないだろうか…。
(ユーチューブライター・所ひで)