秋季キャンプインから早くも2週目に突入し、若虎の育成もいよいよ本格化してきました。
僕が見ているところでは新井良太、大和、上本博紀、今成亮太など、今年一軍で活躍した選手たちの他にも森田一成に北條史也、中谷将大など注目株が多く在籍しています。
現在、新聞報道でも私が選手たちを「小バース」「小新庄」「小掛布」などと呼んでいると出ていますが、これはただ単に彼らをホメているだけではありません。キャンプ中の選手のモチベーションを上げるために付けた名称でもあるのです。
それらの選手の中で、私が注目しているのは伊藤隼太です。彼とは昼間の練習以外に夜間でのマンツーマン指導をしていますが、彼の凄みは継続する力、そしてその練習量に耐えられる肉体にあります。この2点は野球スキルを上げていく中で、絶対に欠かせないポイントでもあります。
毎日、同じ練習をしても彼はまったく嫌がるそぶりを見せません。グラウンドでも苦しい顔一つせず、弱音も吐かずにスイングを振れるのは、彼が持ち合わせた一つの才能です。
以前も書いたとおり、今回のキャンプの最大のテーマは“体をレベルに”です。各選手は毎日、1000本のスイングを目標に練習に取り組んでいます。伊藤も肩、腰、膝をレベルに回転できる意識を持ってのスイング練習に重点を置いています。そうすることで、下半身の体重移動の調整ができ、バットとボールがよいポイントで当たる確率も上がってくるのです。
けれど、伊藤には修正すべき点があります。スイングの際に左肩が下がってしまう癖です。これは今年のレギュラー陣も苦しんだ個所でもありますが、彼の場合、スイングの時に首がやや後ろに倒れてしまう傾向もあり、それが左肩が下がってしまう要因にもなっているのです。
ただ、この時点で首の動きを指摘してしまうと、バッティング練習でよけいな意識を持たせかねません。現段階では、あえて首への注意はするべきではないと私は判断しています。
では、首の矯正をせずにいかに伊藤の左肩を上げさせるか。それがレベルでのスイングなのです。
レベルとは読んで字のごとく、水平にバットを振ることです。理想はコマのように軸をしっかりと保った回転。このバッティングが可能になれば、自然と彼の左肩も上がってきます。レベルでのスイングは、いい意味での連鎖反応を起こす練習なのです。
彼の欠点は左肩が下がるだけではありません。それがトップの位置です。彼はバットを構えた際、ややトップの位置が浅い。これにはテイクバックの修正が必要となってきます。感覚的には弓矢を引くような形でバットのトップを深く持っていくようにしなければいけません。
そのためには、まずスポンジボールを使ってゆっくりとスイングをさせて、「今、やや膝が折れていた」など細かく指摘していくのがいちばん効果的です。