今年の秋季キャンプでのテーマは、ストレートをしっかりと打ち返すこと。それを実現させるには、バットをレベルに振ることが大切だと教えてきました。それには、スイングの際に肩や腰、膝を水平に使って、ボールの芯を捉える動作が重要になります。
この指導は、はっきり言って本当に地道な作業。体をレベルに使いこなすにはとにかくバットを振って振って振りまくるのみ。フォーム改造はスイングの数がモノを言ってくるのです。
キャンプでは選手のスイングを見ながら「今、肩がやや上がっていた」「膝が使えていない」といった細かい指示を出し、選手それぞれの理想のフォームに近づけていく作業に重点を置きました。その結果、野手陣は1日1000本のスイングをこなすキャンプとなりました。
ただ、キャンプで成長するのは決してテクニカルな部分だけではありません。選手のメンタル面での成長も非常に重要なのです。
まず、今回のキャンプで気をつけたのは、選手を混乱させてはいけないという点。監督やコーチによって言っている内容が違えば、それだけ選手たちも混乱してしまいます。そのためにも秋季キャンプでは、選手に教えた指導内容は打撃コーチである河村さんにもしっかり伝え、コーチによって違いが出ないように対策を打ちました。
そして、練習内で私が最も重要視しているのが楽しく練習ができる環境作り。どのようなモチベーションで練習に打ち込めるか、ということです。当然ながら、このやる気しだいで打者としての進化するスピードはまるで違います。
私もこのキャンプではさまざまな選手たちと接し、選手それぞれの性格や気の持ちようを知ることができました。
特徴的だったのは、上本博紀と大和、2人の闘志です。彼らはおとなしさの中にも気の強さを感じる選手。自分の感情を表には出さないけれど、こちらの伝えたことにはとにかくやり抜く意志を持っています。
1番、2番での打順を担う彼らに求められているのは、出塁率の高いバッティング。つまり確実性を上げなければ一軍定着への道はありません。2人はその課題を十分に理解しているからこそ、やる気を持続させることができるのです。
やり続ける力で言うならば、伊藤隼太はチーム内でも群を抜いています。彼は選手の中でも黙々とスイングを行うなどストイックに自分を追い込むタイプの打者。もともと真面目な性格だけあって、キャンプに打ち込む集中力はすばらしいものを持っています。
反復練習でも弱音や緩みを見せずに野球に没頭できるのは、堅実な性格だからなのかもしれません。