今回のキャンプで、とても驚かされている選手がいます。それが新井良太。そして驚かされている点は、彼のフォームです。
彼は今年、開幕4番でスタートした打者。しかしながら、シーズンが終わっての打率は2割3分8厘とふがいない結果でした。
この原因の一つに、スイングの荒さがありました。シーズン中、彼のスイングは暴れているような印象がありました。ボールを打った時にバットを放り投げるように離していたのも、彼のスイングの荒さゆえなのです。
しかし、今は一転して非常にバランスが取れたフォームに変わりつつあります。トップをしっかり作り、フィニッシュまでキレイに振っていく。
以前はただ、バットを振るという意識だけでスイングをしていましたが、現在は体重移動から膝の使い方など、一連の流れを作った中でのスイングとなっているのです。
これは私が指導したわけではなく、本人がさまざまなチャレンジをした末に完成したもの。それほどまでに意識改革を持って、キャンプに臨んでいるということでしょう。
今回のキャンプで、彼はこのフォーム進化を徹底的に続けていくべきなのです。私も臨時打撃コーチとして、その手助けをしていきたいと考えています。来シーズン、派手さこそなくなったものの、しっかりと流れのある新井のフォームに、阪神ファンも驚くかもしれません。
一軍経験メンバーで言えば、上本、大和も新井同様に進化しています。
1番、2番を打つタイプの彼らに求められているのは、センター方向に打つバッティングです。その際のフォームで大切なのは、とにかくバットを体に巻きつけるようにスイングすること。バットが体に近ければ、インコースのボールも真芯で捉えられます。そうすれば、高い確率でセンター方向に返すことができるわけです。
そしてここでポイントとなるのが、右腕の使い方です。インコースのボールを打つ時、右腕を強く押し込めることで、より体の近くでバットを振れるようになります。当然、そうすることでボールをセンター方向に飛ばせる確率が高くなり、出塁率も上がってきます。
窮屈なバッティングでインコースにも対応できるフォームを作る。上本、大和はこの課題に向かって、今まさに練習をしている最中なのです。
最後にもう一人、私が注目している選手を紹介しましょう。昨年、東洋大学からドラフト6位で入団した緒方凌介です。彼は背が低いものの、バッティングを見ているかぎり、新人とは思えないバランスのよさがあります。他にも、彼には足の速さ、肩の強さもある。おまけに1番、2番だけではなく3番、6番あたりを打てるパンチ力を兼ね備えています。今後、目が離せない若手選手の一人です。